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雨のそぼ降る森、嵐の去ったあとの海辺、晴れた夜の岬。そこは鳥や虫や植物が歓喜の声をあげ、生命なきものさえ生を祝福し、子どもたちへの大切な贈り物を用意して待っている場所……。未知なる神秘に目をみはる感性を取り戻し、発見の喜びに浸ろう。環境保護に先鞭をつけた女性生物学者が遺した世界的ベストセラー。川内倫子の美しい写真と新たに寄稿された豪華な解説エッセイとともに贈る。(解説・福岡伸一、若松英輔、大隅典子、角野栄子)
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Posted by ブクログ
甥っ子が小さかった頃は、一緒に普通の道を歩いているだけでさまざまな驚きと発見と感動に満ち溢れていたのに、いつの頃からか「これ見てー!」と発見を報告しても、それが何か?って顔されるようになって淋しかったことを思い出した。
私たちはせっかく五感を持っていながら、その実、何も見たり聴きたり感じたり出来ていない、自覚出来ていないことを改めて思い知らされた。
これからはしっかり目を見開き、耳を澄ませ、
「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら?もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」と、問いかけよう。
五感で感じてこその人生の醍醐味なんだから。
もっと味わい尽くそう。
Posted by ブクログ
『センス・オブ・ワンダー』を読んでまず感じたのは、これは自然について学ぶための本ではなく、「感じる力」を失わずに生きることの大切さを教えてくれる一冊だということだった。
本書は、海洋生物学者であり『沈黙の春』の著者として知られるレイチェル・カーソンが、自然と向き合う喜びについて綴ったエッセイである。夜の森を歩くこと、雨の音に耳を澄ますこと、海辺で貝殻を拾うこと。そこには壮大な自然描写や専門的な知識が並ぶわけではない。むしろ、日常の中にある小さな驚きや美しさに目を向けることこそが、人を豊かにすると静かに語りかけてくる。
この作品が描いているのは、自然保護の必要性だけではない。知識は感動のあとからついてくるものであり、何よりも大切なのは世界を見て「なぜだろう」「美しい」と心を動かされる感性なのだということだ。私たちは大人になるにつれて、物事を理解することや効率よく答えを見つけることを優先するようになる。しかしカーソンは、名前を知らなくても、理由が分からなくても、まず驚き、感動することに価値があると語る。その考え方は、情報を集めることばかりに慣れた現代だからこそ、いっそう新鮮に響いた。
印象的だったのは、本書が子どものための本であると同時に、大人のための本でもあることだった。子どもはもともと「センス・オブ・ワンダー」を持っている。だから本当に必要なのは、その感性を育てること以上に、大人自身が失ってしまった感性を思い出すことなのかもしれない。読んでいて何度も考えたのは、日々の忙しさの中で、私たちは世界を「見る」のではなく「処理する」ようになってはいないかということだった。季節の移ろいや風の匂い、木漏れ日や雨音に足を止める時間は、決して無駄ではなく、自分自身を取り戻す時間でもある。
ページ数は決して多くない。それでも、一つひとつの言葉には静かな説得力があり、読み終えたあとも心に残り続ける。自然の中へ出かけたくなるだけではない。普段見過ごしていた景色をもう一度見つめ直したくなる。その小さな変化こそが、この作品の何よりの魅力なのだと感じた。
『センス・オブ・ワンダー』は、自然を愛するための本ではない。世界に満ちている小さな驚きや美しさに気づく感性こそが、人を豊かにし、生きる喜びの源になることを教えてくれる作品である。読み終えたあとに残るのは、自然への憧れだけではない。今日という一日の中に、見逃してしまっている「驚くべきもの」はまだ残っているのではないかという静かな問いだった。
#2026年28冊目
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