何で読んだだらうか。スフィンクスの話のあらすじを読んで心惹かれたことを覚えてゐる。
あらすじでは謎こそスフィンクスといふことだつたが、それはかなり大雑把すぎるあらすじだらう。さういふ話があつたらしいとしめくくつてゐるところに謎があるのではないか。あくまで、この話は伝聞でしかない。謎の内容ではなく、謎
...続きを読むを問いかける存在そのものこそが謎。スフィンクスの異国的な姿かたちとあひまつて、謎はひとを魅了する。現存するエジプトのスフィンクス像のその先にある謎。
カンタヴィルの幽霊は、喜劇的な物語の中に、皮肉と哀愁、そして浄化を含んでをり、単なるコメディではない、印象的な物語。劇で上演されたならかなり舞台映えする作品だと思ふ。
また、ワイルドにゆかりの深いエイダ・レヴァーソンの作品の中でも、ワイルドの裁判関係の出来事の回想録は、ジッドの描くワイルドとは異なる、ワイルド像が垣間見られた。良くも悪くも、ワイルドの大きな転換点となつた。夫人との関係や彼の行動、友人の視点である以上、同情のまなざしが含まれてゐないといふことはあり得ないが、それでも彼は彼なりのやり方で生き抜いてゐたことを感じさせられた。