社会学講義とあるが、社会学入門である。
まず、社会学(Sociology) 昔からなんかピンとこなかった。非常に広範な領域を扱う学問だと思っていましたが、本書を読んで腑におちました。
societyの訳文をみると、社会、世間、共同体とあり、理論社会学を読むと、個人の集まりを研究しているとあります。
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共同体を扱う学問であるとの内容であれば、その範囲も明確であり、他の社会科学との関係なんとなく、区別がつきそうです。
本書は大きく3部にわかれています。
1部:社会学とは何か
2部:社会学の3分野
①理論社会学(ミクロ社会学:個人を扱う、マクロ社会学:集団を扱う)
②領域社会学:個別研究(内包的領域社会学:家族社会学、農村社会学、都市社会学、産業社会学 外包的領域社会学:経済社会学)
③経験社会学:経験的実証的方法(社会調査、統計調査)
3部:社会学の歴史
①前史+社会学第一世代 英仏啓蒙思想が出発点 仏:コント 英:スペンサー 独市民社会論(ヘーゲル、シュタイン、マルクス) 英市民社会論(スミス、ファーガソン)
②社会学第二世代 マクロ社会学の確立 仏:デュルケーム 独:テンニェス 独:マックス・ヴェーバ 米:クーリー 米:ミード
③現代社会学 第二次世界大戦後 機能主義理論 現象学的社会学 シンボル的相互行為主義 社会的交換理論と合理的選択理論
日本における社会学
①第一世代 福沢諭吉、板垣退助 スペンサー 外山正一 コント
②第二世代 高田保馬 戸田貞三 新明正道
気になったのは、以下です。
■社会学とは
・社会学とは社会を研究対象とする学問である。社会とは、複数の人びとの集まりである。
・マクロ社会 家族・学校・企業・官庁・村落・都市・国家・国民社会
・マクロ準社会 群衆・市場・社会階級・民族
・社会学の研究対象は、狭義の社会であり、狭義の社会は、マクロ社会とマクロ準社会と、ミクロ社会とに分かれる
・マクロ社会学は社会システムを主導概念とする
・認識方法による区分 3つの認識方法 歴史・理論・実践
①理論社会学
②経験社会学 経験OR実証 個性記述的研究 特定の社会集団、特定の地域社会、特定の出来事、事件を対象にそこで起こっていることを記述スルタイプ
法則定立的研究 仮説命題の検証を通じての一般化を試行するタイプ
③社会史
④社会政策
■理論社会学
・ミクロ社会の概念は、20世紀初頭になってから、突如はじまった。ジンメル、ミード、クーリー、トーマスらが、ミクロ社会学の創始者
・マクロ社会の他、ミクロ社会という概念を必要とする理由は、3つある。
①本体単一の意志を持たないマクロ社会が、いかにしてその構成員たる個々人の意志の集約をなし得るのかという問題を明らかにするため
②そもそも我々が観察することのできるのは、個人の行為であり、マクロ社会それ自体は、観察することができないから
③価値システムとしての文化の問題があげられる。価値システムは社会システムと同じく、マクロ社会レベルの概念でありる。個人が抱いている観念としての価値ならば、当該個人に面接することによって、それを聞き出すことができるから
・プロタンティズムの倫理が資本主義を生み出したというヴェーバーの命題定立は、実証研究の手続きにおいては、ミクロの価値意識のレベルで行われており、また実証研究としてはそういう手続きをとるしかない。
・重要なのは、個人レベルでの欲求・動機・目的は、社会システムの中で、けっしていつも充足ないし達成され得るわけではないということである。
・人間の行為には、感情的要素や伝統的要素が含まれているので、すべての人間行為が合理的であるとはいえないが、行為を目的達成過程として定義するかぎり、最小限度の合理性の契機はすべての行為に含まれていると考えることができる。
・ホモ・エコノミクス ①経済的利得を最大にするという、合理主義の基準 ②他者の感情や態度にはいっさい配慮しないし、その影響も受けないという利己主義・個人主義の基準
・ホモ・ソシオロジクス ホモ・エコノミクスと対極の概念、社会化された人間 社会システムから課せられた役割を分担することを自発的に受け入れ、そのことを通じて、他者と協働しながら、社会システムの機能的要件の達成に貢献する社会的行為者のこと
・ゲマインシャフト 他者が直接な要求の対象である場合 親子兄弟、地域社会、友人関係など
・ゲセルシャフト 仕事上の強力関係や市場的交換のように、他者が手段的に必要とされる場合
・相互行為を交換関係としてとらえること これを「社会的交換」とよぶ
・経済的交換とは異なり、社会的交換は、貨幣メディアを用いることなく、それゆえ、価格はなく、ただ、交換比率として価格に相当するものが考えることができる
・価格もついていないが、なんらかの非貨幣的費用を支払うことなしには獲得できない社会的資源を「社会材」という
・公正の観念は価値の共有を必要とし、価値の共有は価値の制度化を要求する
・職業的役割の制度的拘束は、地位のゆえに守ることを期待されている役割行為の様式、また地位のゆえに付与される権限とか、地位のゆえに課せられる義務などを客観化する
・その地位を占める個人が誰であろうと役割期待や行為規範が客観的に確立され、社会構造を構成するようになる
・客観的に確立された社会構造のなかに個人が組み入れられると、その中で制度化されている役割期待や行為規範は個人によって学習され、その学習されたものが内面化されて自我の一部になる。この過程を、「社会化」という
・社会を「システム」として見るという視点を暗黙のうちに含んでいる。
・社会機械論、社会有機体論の下地の上に、ホメオスタシス理論、サイバネティクス、一般システム理論、オートボイエシス理論の4つがシステムの制御メカニズムを理論化していった。
・全体社会において、諸社会的資源ならびのその獲得機会が不平等に分配されている社会構造状態を「社会階層」という。社会階層は複数の階層的地位からなるが、階層的地位を共通にする人々の集まりが「階層」である。
・社会変動は、集団・組織・地域社会などの部分社会レベルで考えることもできる。家族の構造変動、組織の構造変動、都市の構造変動がこれである。
・全体社会レベルでの社会変動は、もっともマクロで最も長期の社会変動である。このような社会変動の考察には、とりわけ「近代化」と「産業化」をその中心に位置づけることが必要である。
・近代化という上位概念の下に、つぎのような4つの近代化のサブカテゴリを考えることができる
①技術的・経済的近代化
②政治的近代化 民主化
③社会的近代化
④文化的近代化
・人類は、科学・技術・経済・政治・法・宗教・芸術などのさまざまな分野において、広義における社会・文化的な進歩を達成してきた。
■領域社会学
・領域社会学とは、社会学の個別研究領域ごとに成立している部門別社会学のことである。
①内包的領域社会学 家族社会学、農村社会学、都市社会学、産業社会学
②外延的領域社会学 経済社会学
■経験社会学
・社会についての個別的事実を確証することを目的とするのが、経験社会学である。そのために ①データを作成する ⇒ ②これを解析する という2つの作業が必要である
・社会事業調査
・地域社会調査
・統計的調査
・意識調査(態度調査)と事実調査
・調査テーマによる分類
・社会史研究
・計量社会学
社会階層調査のデータ解析
目次
序文
第1章 社会の学としての社会学
第1節 社会学とは何か
第2節 社会学の研究対象
第3節 社会学の研究諸部門
第2章 理論社会学
第1節 ミクロ社会学
第2節 マクロ社会学(1) 社会システム構造論
第3節 マクロ社会学(2) 社会システム変動論
第3章 領域社会学と経験社会学
第1節 領域社会学
第2節 経験社会学(1)社会調査
第3節 経験社会学(2)計量社会学 社会階層調査のデータ解析
第4章 社会学史の主要な流れ
第1節 前史と社会学第一世代
第2節 社会学第二世代
第3節 現代社会学の諸潮流
結び
文献案内
索引
ISBN:9784121012425
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:383ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:1995年4月25日発行