読むまではぼんやりとサイバー戦争の脅威を理解していたが、本書を読むことで、取材ベースでの現実味のあるストーリーと、人に焦点を当てたテーマに触れ、その脅威を身近に感じることができた。
大なり小なりITないしインターネットに関与する現代人ならば、一度は目を通しておくべき一冊。
サイバー戦争は以前は技術
...続きを読む力が高く攻撃手段を独占していた米国が優位であったのかもしれない。
しかし、サイバー攻撃手法は個人のスキルとインターネット環境があれば、誰もがチャレンジでき、そして発見された攻撃手法は市場の中で金銭で取引が可能だ。
つまり、他の通常兵器やNBC兵器などとは異なり、世界の誰もが関与することができ、大国以外でも金銭があれば兵器を簡単に備えることができる。
つまり、非対称戦の最たる例になっている。
本書は人に焦点を当てている。
あらゆる危機がインターネットにつながっていく現代の先進国では、同時に脆弱性も多く残留することになり、これをメンテナンスやパッチ適用しない、人の弱さが脆弱性をより際立たせることになっている。
クラッカーやサイバー技術に強く関与する人々の視点としても、うまくいけば金になる市場において、
国家や主義主張の壁を超えて、金銭を優先した取引になることは否めない。
そもそも売った相手が、サイバー攻撃を正しく行うなんて、なんの保証もない。
アメリカは戦略的にも欠点があり。自国の優位性を信じて、
攻撃に特化したサイバー戦略を優先し、守りについては後手に回っている。
脆弱性の開示についても官僚的な要素があり、あまり最善を尽くしているとは言えない。
本書に出てくる国家的なプレーヤーとしては、
米国、イラン、ロシア、中国、北朝鮮といった国々。
またキーパーソンの出身国としては他にも様々な国が登場する。
日本は、本筋には出てこないが、エピローグ部分で好事例の国として紹介される。これは意外だったが、ある分析ではまさにサイバーに対する人の衛生観念的な部分と、詳細に練られた戦略が功を奏しているとのこと。
たしかに日本人は真面目にパッチ適用しそうだし、国の戦略を企業経営に反映させるガバナンスもありそうな気がする。
こんごもサイバーという戦争の一空間の鍵を握るのは、人、になると感じた。