ジェンダーの在り方とは何か。
古典だけではなく『花ざかりの君たちへ』(2023年10月21日にご逝去された中条比紗也先生、この作品大好きでした)などの漫画、タイのドラマ、コスプレなど実に多面的に読み解いている。
『とりかへばや物語』は異性装を語る上で何度も登場する。
これを下敷きにした男女入れ替
...続きを読むえの物語は何度も語り直される。
それは、時代を投影させる不思議な物語であると同時に、「自分とは何か」という人の変わらぬ問いを投げかけるからだろう。
巴御前の話が個人的には大変興味深い。
大好きな手塚治虫の『火の鳥 乱世編』が出てきたのには興奮した。
女を連れていたのが恥なのか、それとも同志としてあるいは想い人として生き残ってほしくて去らせたのか。
その捉え方は、現代に近づくに連れ変わってくる。
共に死ねなかったことよりも一人でも生きる、という強さが強調されてきたという指摘(162頁)は興味深い。
真実はわからないからこそ、そこに女武者としての矜持を見、愛を映してみている。
歌舞伎や宝塚に言及する際、これまた今はマリにハマっている『かげきしょうじょ!!』が登場する。
これもまた興味深い。
歌舞伎も宝塚も、今揺れに揺れている。
夢の世界は努力と苦労があってこそ造られている。どうか、健全に夢を見せてほしい。
そして、そのために、ファンも、過剰な期待をするのは禁物だ。
最後に語られる「男の娘」についてはかなりマニアックな内容で、正直よくわからなかった。
しかし稲垣足穂の研究を指摘したり、聖性を見たりという点は面白い視点である。