読み心地はとても奇妙でユニーク、けれどだんだんとほんのりと温かい気持ちにもさせてくれる、ファンタジーでありながら人間味にも切り込んだ、不思議な感覚の二作品でした。
「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」、はほんとにこのままのあらすじです。そこに理由はなく、ただそういう目にあった妻と夫、そして同
...続きを読むじく事件で奇妙な目にあってしまった人々の顛末が淡々と描かれます。ありえない現実を受け入れていく過程には運命を受け入れるような重々しさがあるわけではなく、ただあくまで日常のひとつとして受入れていきます。そのなかで、夫婦のあいだの感情のゆらぎ、想いのやりとりがほの見えて、優しい気分になれました。洒落た挿絵もとても文章に合ってます。大人のための寓話、といった風情です。
もう一篇の「奇妙という名の五人兄妹」もまた、そういう苗字を背負った兄妹が、祖母の謎の言いつけに従って行動し、いがみあいつつも絆を取り戻していくという、やはりファンタジックな要素を持ちつつも人間の豊かな心情が描かれてもいる作品で味わい深いものでした。
ありえない嘘を前提にしつつも生き生きと動く人々がとても魅力的な二作品でした。面白かったです。