まーちさんのブクレポを読んで面白そうだったので読んでみた。
フィクションの形式をとっているが薬害エイズ問題の真相に迫ったルポルタージュのような本。著者は元NHKのディレクターで「埋もれたエイズ報告書」という番組を作成し、大反響を呼んだ。
血友病患者のエイズ罹患の責任は誰にあるのか。
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エイズ患者の売血により汚染された血液製剤が製造されてしまったのは仕方ないとしても、それがわかった時点で、なぜ市場への流通を止め、または回収することができなかったのか。そして何よりなぜその危険性が、医師や患者に知らされることがなかったのか。
実際の事件では、当初は日テレの櫻井よしこによる取材が先行して、薬害エイズの責任は血友病の権威であった安部医師にあるとマスコミ(特にテレビ)は報道していた。製薬会社から利益供与を受け、非加熱製剤から安全な加熱製剤への切り替えを、意図的に遅らせたことにより、感染者を増やした、といった内容だったと思う。
しかし、自分も以前ブクレポに投稿したが『薬害エイズ事件の真実』という本によれば、安部医師にかけられた嫌疑は冤罪だ。いま思えば偏向報道だった。
で、本当に悪い奴は誰なんだという原因を探っていくと、厚生省の担当課長に行きつく。この小説では氷室課長という人物だ。実際は郡司とかいう名字だった思う。
こいつは本当に悪い。というかダメ官僚そのもの。こいつが様々な情報を握りつぶした。悪意があったというわけではない。ただ、不都合な真実を、なかったことにしてしまった。
保身と省内利益だけを考えていたこんな小者ではなく、大局に立って判断できる、常識的で正義感を持ち合わせた人物がもし担当だったら、エイズに感染した血友病患者はかなり少なかったはずだ。
実際のこの担当課長は責任もとらず、その後も出世している。なんなんだこの国は!ひどい話だ。
殺人者!とのレッテルを安部医師は貼られたが、その言葉はこの課長に浴びせたい。
小説の最後にはパフォーマンスで人気取りをする政治家が、薬害エイズの真相を突き止める資料を発見したと騒ぎ立てる場面が描かれている。その資料は番組制作者からリークされた情報なのだが、さも自分が発見したかのように演じる。
実際の事件でもそんなことがあったし、当時を知る人なら菅直人だとすぐわかるが、これまたこんな小人物が原発事故当時の首相でなかったら、違う結果があったのかもしれないと考えさせられた。
当時、連日テレビで見かけた川田龍平くんはいま議員になっている。テレビで見るたびに薬害エイズを思い出す。彼がまだ生きているということは、エイズの治療法も改善して、もう不治の病ではないのだろうか。そう考えると少しは救われたような気持ちになる。