少々書かれた時点は古いが、結局の所リーマンショック以降の金融資本主義では抜本的に解決された事態は殆どないので、2012年に書かれたこの本の内容は2016年の現在でも妥当するものが多い。
例えば、アメリカの財政赤字を日本その他の経常黒字国がファイナンスするという図式がもはや持続可能でないのは、今行わ
...続きを読むれている大統領予備選を見てもよくわかる。この図式が成り立つのは本書にあるように、アメリカに魅力的な金融商品が多数あり、また強いドルを背景に海外からの多額の資金が常にアメリカ国内に滞留するからだが、当然この前提として常に投資を惹きつけられる高度な金融商品を開発するためのインセンティブが、ウォールストリートのトップエグゼクティブ達にふんだんに与えられなければならない。当然彼らのサラリーはスカイロケットし、貧富の差は破滅的な水準にまで拡大する。その結果圧搾された中流階級以下の人々が(自ら名誉あることではないと認めながらも)その資格を欠くことが明白な人物を大統領選挙に担ぎ出さねばならなくなるのだ。
その意味でも(必要以上にアメリカをスポイルしないためにも)本書の主張通り、日本や中国、韓国のような経常黒字国が通貨協定を結び、ドル以外に保有通貨の分散を図るのは大きな意味があると思う。未だに日韓の通貨協定を日本から韓国への一方的な便益供与だと考えている人にぜひ読んでもらいたいのだが…。