本書の主旨は、「情報がどのように政治を動かすか」である
■誘導工作
民主主義への脅威
発信源が不明なニセ情報や暗い宣伝によって、市民を執拗に、悪意をもって狙い撃ちをする行為が、民主主義を危機にさらしている
誘導工作とは
①中長期的な時間軸の中で、世論操作や、選挙介入を行うこと
②瞬間的な
...続きを読む事象として、ハッキングや、ウイルス感染などサイバー攻撃で、政府・軍・企業・インフラを攻撃し、国際イベントを混乱させること
社会の脆弱なポイント ①地理的近さ、②政治・経済格差・宗教・文化などをめぐる対立や論争、③ソーシャルメディア依存による世論の分極化、④エネルギーなどの資源の外国への依存
■ロシア
20世紀の冷戦には東西間にルールはあったが、今はない
ロシアのハッカー集団は10ほど、軍隊、政府組織、防衛産業、政党、メディアなどを集中的にねらい、機密文書や内部情報を盗んで政治的影響を行使しようとする、「サイバー・スパイ集団」である
ゲラシモフ・ドクトリンーハイブリッド戦争の概念は、戦争のルールそのものを変貌させた
ロシアはソーシャルメディアを完全に兵器化した
ソーシャルメディアの出現で、情報は、国内、国際政治の双方を動かす極めて重要な要素となった。その最大の特徴は、情報の出所が特定できず、制御もできないことだ
■反撃に出た西側
選挙介入の5段階
1 疑念や対立をあおるため、偽情報を広く流布する
2 微妙で取り扱い注意の機密情報やデータをハッキングなどで盗む
3 盗んだ情報を告発者を通じ、SMSなどで流す
4 主流メディアが報じることで情報が正当化され、狙った相手がダメージを受ける
5 敵対陣営がダメージをうけ、優勢になった側の政党などが、外国勢力と水面下で連携するようになる
まず人々が、こういう脅威があると認識しなければならない、次にその脅威に備えるために、社会全体で情報を共有し協力して対応する仕組みが必要だ
ロシアは、国ごとに特徴を把握してオーダーメイドのように、個別に弱点をついてくる
人は学習しても、技術はさらにそれを上回って進歩する
■中国
外国からは情報を盗み、国内では統制を強める
自国民の統制・管理が最重要課題であり、サイバーの世界では、そのためのビッグデータの技術開発に力を入れてきた
ロシアは今日の戦いをしているが、中国は明日の戦いをしている
中国は、欧州進出の足掛かりとして、まずは、欧州の東側から手をつけた
■日本
沖縄独立論の賛同者には中国関係者が多い、再び日中関係が悪化した際の中国の行動は注視していく必要がある
官民連携は、よっぽど努力しないとなかなか進まない
日本にはまだ、サイバー空間で国民を主体的に守る実力組織が存在しない。深刻だ
日本はサイバー攻撃を戦争として位置付けていない数少ない先進国だ
■EU
欧州議会:保守勢が後退し、ポピュリズムと穏健派が伸長
各国が1選挙区となる「国際選挙」で、共通するのは、政党の得票率に比例して議席が配分される比例代表制である
議員たちは、出身国に関係なく、イデオロギーや信条を共有する国家横断的な政治会派を作って行動する。議会内の議席配分も国別ではなく、政治会派別に振り分けらえる
現在の会派は8つ
EUが決めた法令は基本的に加盟国の国内法を上回る力がある、反対した国も国内法を改正した
■ハイブリッド戦
ハイブリッドで外国に介入してくる勢力としては、ロシアの存在が大きいが、中国、北朝鮮、イランなどの行動にも注目している
ハイブリッド脅威は今後も高まっていく、それは、低コストなのに、効果を上げやすい、しかも、だれがやっているのかが突き止めにくい
日本のサイバー対策はだれが指揮をとっているのかと尋ねられて、答えに窮した
目次
はじめに
略語集
第1章 英国の国民投票、米大統領選で起きたこと
第2章 誘導工作とは何か
第3章 ロシアの脅威
第4章 反撃に出た西側社会
第5章 中国の脅威
第6章 狙われる日本
第7章 次の試練欧州議会選
おわりに
主要参考文献
ISBN:9784121506528
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:304ページ
定価:820円(本体)
発売日:2019年06月10日