かかったことのありそうな町のちょっと頼れる大きさの病院の話。
舞台は祇園にも近い場所。終末期医療。訪問看護。甘いもん。家族の介護。個性的な登場人物。
医師の教科書では学べない人の命との付き合い方が描かれる。
患者と医療者の医療コミュニケーションについて物語から学べることがありました。
医療は専門性
...続きを読むが高く、それだけに患者は「わかったつもり」、医師は「わかってもらったつもり」からコミュニケーションの不具合が起こりがち。
病院で伝え忘れ、聞き忘れ、そんな経験ありませんか?
患者の本来希望する治療や、いのちの終末期についてこの「スピノザの診察室」では、小説の良さを最大限に生かしてお互いの歩み寄りのヒントが描かれています。
教科書や勉強なら読むのに食指が動かない、となるところです。
が、言語化されにくい医療コミュニケーションの問題点を書き出したところは、この書き手・医師でもある夏川草介さんの上手さだと思いました。
医療現場で課題・問題となっている医療コミュニケーションを、多くの人に理解して貰えるという点ではとても良い教材になることでしょう。
読みたくなるコミュニケーションの教科書とでも言えそう。
あ、でも教科書でなくめっちゃいい小説です。
最後の場面では、現在の医療の本当の姿とも言えることが言語化されています。
患者は医療に期待してしまいます。
けれど…
この本では医師と患者、医療行為だけでなくケアとは何かという問いもあります。
人と人とのあいだにある「何か」が大切だという医師作家のメッセージでもあると思うのです。
担当編集者のXの投稿で続編の準備があると知りました。
これから日本の社会での医療とは、患者とは、また家族は。
きっとまた考えさせてくれる本になるでしょう。
今からとても楽しみです。