本書は「スミスの挙げた資本主義の道徳的条件を満たすための挑戦として,スミス以後の経済思想史」を平易にだが,本質的に把握しようと試みたものである。
「お金儲けがフェア・プレイの精神とも,社会全体との富裕化とも切れた利潤獲得機械になってしまうことを,いかに抑止するか」という筋で,J.S.ミル,A.マー
...続きを読むシャル,ケインズ,マルクスが取り上げられる。
一方,その筋からはずれると著者が考えるハイエクとフリードマンは傍流として位置づけられる。傍流ではあるが,現代の経済政策などに強い影響力をもつ経済思想という位置付けだ。
そして,最後に「組織の経済学ー現代の経済理論における株主の位置づけ」が置かれる。これは,「所有者が主役から降りていく」経済思想史の流れのなかに位置づけられる「経済学の本流」の最前線だからだ。
新書の帯には「一冊で経済学の歴史がわかる決定版入門書!」とあるが,経済学の歴史というよりも経済思想の流れであり,それは「お金儲けの暴走によって邪魔されることなく,庶民の努力を引き出すことが,豊かな国を作り出す本筋」という著者の思想によって紡がれたストーリーである。
しかし,そのストーリーは非常に説得性に富み,示唆に富んだものだと言えよう。