ユーザーレビュー アイデンティティが人を殺す アミン・マアルーフ / 小野正嗣 「アイデンティティが人を殺す」chikumashobo.co.jp/product/978448… 宗教や民族や国家が生む排他性非寛容対立は、日本人には実感が難しいかもだけどスポーツの祭典や国別対抗に必ず現れる強大なナショナリズムが良い例だな(だからわたしは大嫌い) 母語英語に加えてもう1言語を習...続きを読む得するという提言がよかった Posted by ブクログ アイデンティティが人を殺す アミン・マアルーフ / 小野正嗣 自身が生まれた国、育った国、そしていま住んでいる国の3つが同じでない人は、世界にどのくらいいるのだろう。 レバノンで生まれ、内乱を機にフランスへ移住した著者は、事あるごとに「自分をフランス人だと感じるか?それともレバノン人だと感じるか?」という問いを投げかけられ、「その両方だ」と答えているという。そ...続きを読むして、いくら「両方だ」と答えても、「自分のいちばん深いところではあなたは何者なのか?」と、問いは更に続き、著者は苛立ちと苦悩を深め、本書を著すに至った。 この問いの裏にあるのは、人の帰属する先はひとつであって、生まれながらに定まっていて変わることなどない、という広く共有された人間観だ。一方、著者は、二つの国、二つの言語、そして文化的伝統の境界で生きている(彼の一族はイスラムの聖なる言語であるアラビア語を母語とするキリスト教徒)という自身の例を挙げ、こうした複数の帰属先を持っていることが自身のアイデンティティであると主張し、先述の人間観を正面から非難する。 自分が持つ帰属先のひとつが傷つけられたり、窮地に追いやられたりすると、傍目には狂信的とも思える人物がそのアイデンティティの守護者に思われ、人はいとも簡単に殺戮者となって惨劇に手を貸すことになる。それが本書のタイトルが意味するところだ。 帰属先は、民族であったり、宗教であったり、言語であったりするわけだが、日本で生まれ、日本で育ち、日本に住んでいる大多数の日本人には、この肌感覚はなかなか持ち得ない。昨今では「ダイバーシティ」という言葉に飽き足らず、「インクルージョン」なる言葉まで登場しているが、本書に書かれている著者の指摘を読むと、ごく表層的な部分しか捉えていないということに気づく。「ダイバーシティ」という言葉の前に、自身が生まれた国と、育った国と、今住んでいる国が異なる人が存在し、そして彼らは複数の帰属先を抱えているという現実をまず知るところから始めないと、真の多様性など到底望めないのではないかと思う。 (ここまで書いてきて、この国で言われるほとんどの「ダイバーシティ」は、日本人内の多様性を指していることに思い当たった。表層的どころか、次元が違っていた。) Posted by ブクログ アイデンティティが人を殺す アミン・マアルーフ / 小野正嗣 ありとあらゆる教義も、時代により解釈がかわる。また宗教が歴史を変えるのと同時に、歴史も宗教を変える。たとえばアラブの連帯を目指したナセルは反イスラーム主義であり、1950年代後半において急進的イスラーム主義はアラブ国家の敵とみなされていた。 故にイスラム教徒にとって、宗教的急進主義は決して必然的選択...続きを読むではない。 精神的な安定への欲求が宗教にもとめられるのは良いが、宗教をアイデンティティや帰属意識の問題から分離しなければ戦争は絶えない。。 グローバル化の普遍性+と画一性− グローバリゼーションの画一化への不安 1、文化が均一化され、乏しいものとなる(凡庸による画一化) 2、アメリカナイゼーションではないのか(ヘゲモニーによる画一化) しかしアメリカから見れば、WASPもグローバル化に警鐘を鳴らされている存在なのである。グローバル化に目を背け、諦めるのは早計。アメリカの優位はさておき、環境・絶滅危惧種を保護するのが当たり前であるのと同じく、世界の文化も保護されるのも当たり前ではないのか。 時折、日本の言語を英語にすれば良いという話を聞くが、英語は私たちのアイデンティティを満たしてはくれない。人と話すという意味で英語は他の言語に対し優位を誇っているが、帰属意識という点で英語と他の言語は等しい。 ナチスの例を考えれば、普通選挙(多数決)は必ずしも民主主義や自由・平等の類義語たりえない。さらに言えば現在の投票は個人の考えでなく、社会を構成する多様な要素を示すものでしかない(ムスリムがフランスで議員にならないように)。しかし民主主義にとって重要なのはそれが成したメカニズムではない。むしろ全ての人間の尊厳なのである。 それまで偉業を成し遂げてきた概念全てが疑われる「不信」の21世紀。 皆がグローバル文明に自らのアイデンティティを見出すこと、もしくは自らのアイデンティティにグローバル文化を含むことが、戦争などのアイデンティティ対立を減らす。そうであるならば筆者同様この考えが当たり前になり、この本が不必要になる時代が来るよう、私自身尽力したいと感じた。 気に入った文 人生は船旅に似ている。運命とは帆に吹く風であり、私たちにそれを決めることはできない。しかし帆の向きを変えることはできる。そしてそれが大きな違いを生む。 船乗りを死に至らしめる風が、他の船乗りを目的の港へ運ぶ。 Posted by ブクログ アイデンティティが人を殺す アミン・マアルーフ / 小野正嗣 唯一の本質としてのアイデンティティがいかに差別、分断、争いを生むかを自らの経験とも照らしながら論じた本。筆者はレバノン生まれのフランス在住ジャーナリストで、まさに加速するグローバル化の中で顕在化する問題に踏み込んでいる。そしてそれをいかに乗り越え、グローバル化の風に対して帆を向けて良い未来へと進むべ...続きを読むきなのか指針を示している。もちろん島国日本も例外ではなく、宗教に馴染みがない人も日本教とでも思いながら読むと大いに参考になるのではないか。 Posted by ブクログ アイデンティティが人を殺す アミン・マアルーフ / 小野正嗣 西洋化について考える良いきっかけになったと思う。 確かに日本もヨーロッパやアメリカの影響を大きく受けていると思う。 多数が洋服を身につけているし、欧風のカフェやホテルを利用している。 このくらいの変化なら良いと思うのだが、時として争いや、差別の引き金になってしまうのは残念だと思う。 それぞれが複数の...続きを読むアイデンティティを持っているという事を忘れないようにしたい。 Posted by ブクログ アミン・マアルーフのレビューをもっと見る