行動法学という言葉が気になり手に取った本。
本が主張したい内容は、P261~P267に凝縮している。個人的に賛成したくない記述もあったが、書いてある内容には頷く箇所が多い。
常に自分自身に問いかける訓練。
以下、メモ。
『処罰が犯罪を抑止するためには、確実性を高めるだけでは十分ではない。確実性の高さを人々が認識することも必要になる。』
P45:処罰への誤解
『刑事処罰のケースと同じく、不法行為責任においても、重要なのは制度の厳しさではなく確実性である。~中略~ 厳罰で臨む方針を改め、危害を加えたら確実に損害賠償が請求される環境を整えるべきだ。』
P62:必要なのは、アメ、ムチ、それとも象?
『心理学者のジョナサン・ハイトは象と乗り手のたとえを使い、私たちの思考を説明している。システム1は象に該当し、直感的、自動的かつ無意識に決断を下す。要するに、本能に従う。一方、システム2は乗り手に該当し、意識的な認知機能を駆使して象を誘導する。ここで問題なのは、私たちの行動や決断の実に多くが、象、すなわち、直感的、自動的な認知機能に支配されていることだ。』
P74:必要なのは、アメ、ムチ、それとも象?
『そうしてみると、法律が人間の行動を形作る方法を真に改善するためには、インセンティブ以外のものに目を向ける必要があることがわかる。行動コードはアメとムチや、象で対処できるほど単純ではない。もっとずっと奥が深い。』
P88:必要なのは、アメ、ムチ、それとも象?
『なかには、善人と悪人は根本的に違うと信じる人たちもいる。古代ギリシャの思想家アリストテレスは、この見解をつぎのようにまとめた。「善人は人生で崇高な理想を掲げ、理性に耳を傾ける。悪人は人生の目的が快楽なので、荷物を運搬する動物のように痛みで支配しなければならない。」要するに、悪人は快楽の追及しか考えないので、行動を食い止めるためには脅して痛い目にあわせなければならない。』
P114:道徳的側面
『逆に言えば、道徳的に許容範囲だと広く認識されている行動を制限するような法的ルールは、ほぼ確実に失敗する。』
P116:道徳的側面
『法律が人間の行動を形作るうえで、市民的服従はきわめて重要な役割を果たす。市民的服従へのこだわりが強い人は、法的ルールを守る傾向が強いと考えるのは理にかなっている。たとえ施行される範囲が限定されても、多大な犠牲を払っても、ほとんどの人が違反しても、全面的に賛同できなくても、法律には従う。だって法律なのだから!法律は守らなければいけない。
市民的服従は行動コードに不可欠な要素だ。本書がここまで取り上げてきたメカニズムが全て効果を発揮しない時、法律が最後の拠り所にできるある種のフェールセーフとして機能する。逆に、市民的不服従は炭鉱のカナリヤのようなもので、法律が賢明な判断を下せず、もはや正当な利益を守れなくなったときにその事実を伝える。』
P119:市民的服従
『そもそもルールに違反した行動をとるのは、費用と便益を比較した結果、あるいは罰を受けるのが恐ろしくて反応した結果の自由意志による決定ではない。悪い行動が存在するのは、正しく行動して法律に従う余裕や能力や機会が欠如するからでもあるのだ。』
P184:変化を知らしめる
『企業文化の問題を解明するためには、調査委員会の報告に目を通し、議会での公聴会に耳を傾け、裁判記録にアクセスするとよい。さらに調査ジャーナリストがすっぱ抜いた事実をまとめた本や、内部関係者から持ち込まれた目撃談を掲載した新聞記事を丹念に読むこともできる。こうした記録を調べ上げた結果、有害な違法行為を長年にわたって支えてきた有毒な文化は、七つの要素を混ぜ合わせて作られたカクテルのようなものだと私たち著者は発見した。』
P236:システムを食い物にする
以下、7つの要素
1:とにかくやってしまえ
2:話すな…さもないと
3:ルール違反はかまわない
4:違反を隠してもかまわない
5:悪いのはおまえで、我々ではない
6:危害はおよんでいない
7:我々のいうことを信じるな
『結局のところ、望ましくない行動に法律を通じて対処したければ、どんなタイプの行動であろうとも、行動コードによって問題の根本的原因を突き止め、どんな動機づけに促されたのか、どんな状況が関わっているのか、確認しなければならない。そのうえでそれぞれの問題に対し、最も効果的で強制力が少ない方法で取り組む必要がある。行動コードに関してこうした洞察が得られれば、以下の6つのステップを通じた分析もスムーズに進む。』
P251:行動法学
以下、6つのステップ
1:好ましくない行動にはどんなバリエーションが存在するか
2:行動はどのように機能するか
3:行動を控えるため、人々は何を必要とするか
4:ルールやルールの作成と執行に関わる関係者を、人々は正当だとかんがえているか
5:道徳や社会規範はどんな役割を果たすか
6:インセンティブや外発的動機付けをどのように考慮するか