80年代を代表するバンド、Talking Headsのフロントマンであり、近年は音楽映画『American Utopia』で素晴らしいショーを見せてくれたDavid Byrneが2012年に出版した音楽論考がついに邦訳。
レコードからストリーミングに至る音楽メディアの変遷について、レコーディングス
...続きを読むタジオで実際に何が起きているのか、音楽ビジネスを巡るカネの話など、テーマは広範に渡るが、いずれも一般論だけではなく、彼自身の実際の活動におけるエピソードがふんだんに盛り込まれていて、膝を打ちながら読み進めた。
白眉はやはりレコーディングスタジオでのトピックであり、ここではBrian Enoとのコラボレーションがどうであったか、コード進行を持つポップス的な作曲から、ワンコードでひたすらリズムテイクを録音してそれをテープコラージュしながら曲を作っていくというTalking Headsの傑作『Remain in Light』の時期のレコーディング術などは、彼の音楽を長年愛してきた自身としてワクワクするネタばかり。
また、カネの話に関しては、ここまでミュージシャンが内実を晒すことは滅多にないのでは?、と思うくらいのレアな一次情報に溢れている。それは、彼の数枚のソロアルバムについて、発生した経費の総額・内訳、売上の総額・内訳(地域別、CD・配信などのメディア別)までが何と円グラフで示されているからである。
そうした自己開示も含めて、音楽を志す若いミュージシャンへの応援とも、自身は受け止めた。