本書で示されるのは、西暦2100年ごろから世界的にも人口は縮減して行くという未来だ。
日本では少子高齢化が進み人口は減っていても、世界的には人口が増えていると思っていたのだが、そうではないということだ。
人口転換が起こるメカニズムについても解説していた。
自分の要約は正確でない気がするが、以下のよ
...続きを読むうなところだろうか。
社会的な生産性が上がり、社会資本が蓄積されると、平均寿命が延びたり、死亡率が下がったりして人口が増加し、再生産年齢の女性の生存率も上がる。
家族を持つタイミング、生むタイミングを量る余裕が出てきて、出産が抑制されていくということだったと思う。
だいたいどの地域でもこのような経過をとってきたとのことだ。
これまでの歴史を見ても人口が(一時的に)減る時期というのはあったそうだ。
疫病の大流行や 災害、気象条件、戦争などによる。
ところがこれから迎えるであろう長期的な世界的な人口縮減は、これといった原因が特定できないものになるだろうと著者はいう。
こういう部分を読めば少し心がざわつく。
しかし本書は、理性的に変化に対応する必要性を説く。
人口減になるからと言って、地球温暖化や環境破壊が収まるわけではない。
極端な楽観論に陥ってはいけないという。
また、例えば女性や子供を持ちたがらない若い世代に責任を転嫁するのではなく、終末論のようなものに振り回されることもなく、いかに人類が存続できるのかを冷静に考えるべきだということだった。
そのために 社会制度、 社会的な基盤、 都市の作り方、 エネルギーや食料生産のあり方などを抜本的に変えていく必要があるという。
社会制度としては、 新自由主義的な経済政策を改め、生産と再分配の方法を変更する。
気象災害への対策としては、 被害を受けにくい地域に人口を分散あるいは集約して防災能力を高めたコミュニティの世界的ネットワークを築く。
食料問題については合成食品 の導入 を進め、食料生産を自然環境から切り離すことなど。
なるほど、と思うが、どれ一つ簡単にできそうにない。
利害調整などで意見がまとまらないのが目に見える。
大きな宿題を出されたような気がして、なかなか重苦しい気持ちになった。