著者で、パティスリー「オーボンヴュータン」店主の河田氏は1944年生まれ。菓子職人をめざし、渡仏して修行し、帰国してお店をひらき、っていうエピソードが書かれているのだけれど、いやいや今とは時代が全然違うー。フランス菓子なんて日本人はほとんど見たこともなかったわけだし、フランスでの修行だって、お金がな
...続きを読むくて和食屋で働いたり、パリ五月革命に遭遇したり、ブドウ狩りのアルバイトで奴隷のように働かされたり、すごい苦労があったようでびっくり。でも、そんな苦労はさらっと書かれていて、それよりもっと、何度もくり返し書かれている菓子職人としての心がまえや情熱、働くということついて、仕事のしかた、などなどになんだかいろいろ感動してしまった。お菓子づくりの専門的な話も、食べる専門のわたしでもすごく興味深く読めた。食べるなら、こういう人のつくったお菓子を食べたい!と強く思った。11のお菓子にまつわる思い出や思い入れのエピソードもよかった。今はやりのスイーツというより、伝統的なフランス菓子という感じなのもいい。お菓子の本というと、やっぱりレシピや、カラー写真でのお菓子の紹介が多いけれども、こういう読みものとしてのお菓子関係の本をもっと読みたいなと思った。いろんなパティシエの修行話とか。(この本を読んでいて、フランスの地方の伝統菓子を復活させたというピエール・エルメ氏に興味がわいて。レシピじゃないエルメ氏の本が訳されたらいいのに)。オーボンヴュータン、わたしは一度しか行ったことがないんだけれど、またすぐにでも行きたくなってしまいました。