『北の国から』などで知られる名脚本家、倉本聰のシナリオ執筆のプロセスがプロットから完成稿まで記されている。
自分も脚本を書いており、書くたびにシナリオ制作の一連の流れに躓くことが多いので勉強になった。
キャラクターのバックグラウンドを住んでる町や、そこでの生活まで考えるというやり方は岸川真の『だれ
...続きを読むでも書けるシナリオ教室』にも載っていた。
だがこのプロセスを自分は面倒臭くて飛ばしていたのだが、やはりここまでやらないと生きたキャラクターを生み出すのは難しいな、と改めて感じた。
ただ完成稿のドラマは今の感覚だとちょっとどうなんだろう、という面もある。
例えば美麗な女性に対して昔使っていたであろう”マドンナ”という言葉。これはさすがに今はもうほとんど死語で、この言葉から想像するのはアーティストのマドンナくらいだろう。
それに男女の台詞や恋愛の価値観がもう埃が被ってると言っていいくらいに古臭い。そういう部分にはちょっとこの感覚は、と思ってしまう。
ただシナリオのメインのストーリーライン自体はさすがプロのシナリオライターだ。コロナ禍を意識した、はったりを効かせた物語は87歳とは思えない時代感覚だ。
60年以上もシナリオを書き続けてきただけあって、創作に対する独自の考え方、哲学も興味深かった。
普遍的でありながらも新鮮で、創作をしている自分には学ぶことが多い一冊だった。