著者の髙橋氏は豊島区で長く情報システムを担当され、CISOも務めた方であり、複数の他自治体のアドバイザーも行ってきた方なので、現場目線で自治体DXの成功に何が必要なのか、とても良くわかる内容になっています。
第2章に記載のある課題のうち、「声の大きな職員に手をこまねく」というのは、傍から見ると笑い話
...続きを読むのようなあるあるネタですが、根が深い問題ではあるので、とても参考になります。
自治体DX推進のためには、本書に記載があるとおりですが、多くの関係者を巻き込んだ体制構築が必須です。
私自身も自治体や公共組織のIT関連プロジェクトに複数関わってきましたが、炎上するプロジェクトは、発注者側である職員がどこか他人事だったり、要件を決められなかったり意思決定ができなかったりというケースが多いです。
逆に、成功したといえるプロジェクトでは、主管部署が早い時期から関係部署を巻き込んだり、庁内への周知を行ってオーソライズしたりというケースが多いので、今後の自治体DXの推進においても、全庁的な組織体制の構築は非常に重要だと思います。
本書では、情報セキュリティ(テレワークやLGWAN、三層分離)、システムやICTツールの調達(入札、プロポーザル)など、自治体の現場職員がよく悩む、困るところのアドバイス的な内容も多く、勉強になります。(個人的には、システムやツールの調達はプロポや価格競争の入札ではなく、総合評価がよいのではと思いますが)
第4章に記載があるように、「人に優しいデジタル化」、いわゆるデジタルデバイド対策は、民間企業では考える必要のあまりないことで、自治体や公共機関ならではですが、だからこそ自治体DXにおいては最重要の検討課題ではないかと思います。
全般的に自治体職員の現場目線で書かれており、自治体DXを推進するうえで、情報部門以外の原課職員にこそ読んでほしい一冊だと思いました。