奥州の野球少年が2021年二刀流としてメジャーリーグMVPに輝くまでの過程を、1460日間密着した番記者がまとめた本書。
2021年以降の活躍に目が行きがちだが、個人的には2018~2020年の怪我の苦しみや手探りな起用法、懐疑的な評価など悪戦苦闘の時期を詳細に知ることができたことがとてもよかった。
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「投打の片方が伸びてもう片方がイマイチになると一方に専念するように圧力がかかる」「チーム再建のために新監督が真っ先に変えるのが外国人選手」といった厳しい環境の中で出場し続けていることは、なるほど確かに偉大だ。これは日本での5年間の二刀流としての実績を買われていたという点が大きいと思うが、ドラフト強行指名や熱心な説得、そして二刀流の提案をし前人未到のスーパースターの礎を築いた日ハムの首脳陣や栗山監督の功績はあまりにも大きすぎると感じた。
そして何より凄いのは一人の日本人選手によりメジャーリーグ120年のルールを変えたという事実で、まさに歴史を目撃できていることを本当に幸せに思う。
意外だったのは、ベーブ・ルースが二刀流として活躍したのは2年間のみで、本人は体力面も考慮し全く乗り気ではなかったということ。もちろん先駆者としての実績は凄いと思うが、自らの意志で二刀流にこだわり続け投打で超一流の成績を残している大谷は、あの人柄やルックスも含めて完全に「野球の神様」超えをしている存在だと思う。
相次ぐ主力の離脱や、精彩を欠くチームのプレーによりどれだけのフラストレーションを感じているかは計り知れないが、そんな中でも野球を誰よりも楽しみ勝つことにこだわりチームを引っ張る姿を観るだけで、毎日生きる活力を貰っているし、これからも前人未到の道を切り開く世界中のスーパーヒーローであってほしい。