「落下した猫が必ず足から着地するのはなぜか?」
答えは、「怪我をしたくないから!」などと言うと、チコちゃんに叱られる!じゃねーんだよ、と怒られますね♪
著名な科学者の面々が、この「ネコひねり」問題に対峙している。
外力が加えられない限り落下中の物体が回転することはあり得ない。と、ニュートン力学を
...続きを読む知っている人は考える。
猫はおかしい。
4本の足が全て上を向いていても、そのままだと頭から落ちてしまいそうでも、たいてい足から着地する。
頭を上にしても下にしても、少し勢いを付けたり回転を付けたりして放り投げても、四つ足で着地する態勢を作る。
恐怖を感じた猫たちは必死で態勢を立て直しているのだ。
猫は何分の1秒かで宙返りができてしまう。
重力を感知し、生命の危険から身を守るという目的を達成するための「反射」反応のなせる技だ。
相対性理論によると、自由落下中は重力を感じない。
上下左右の識別はできないはずなのに猫はわかる。視覚に頼っているわけでもないのだ。目隠ししても分かる。
物理学だけの問題ではない。神経科学の観点からも随分と調べられている。
どうやら猫は、6秒程前の重力の記憶を頼りにしているらしい。
1700年の「液体中で泳ぐ物体について」という論文に、猫の落下問題に対する説明が出てきた。
このころから「ネコひねり」の問題に真面目に言及する科学者が現れる。
しかし、猫の空中での回転速度があまりに早いので、解析のために高速写真の技術向上を待つことになる。
1894年、猫の宙返りの連続写真が撮影される。この写真に、フランス科学アカデミーの物理学者が関心を寄せた。
それでも、猫の宙返りを科学的に説明するのは難しかった。
現在では、落下するロボット猫の研究も盛んに行われているが、宙返りの詳細に関する見解がいまだに大きく異なっているのに驚く。
なぜ猫の動きの解明にいまだに苦労しているのか。
多分一つの戦法ではないのだと思う。
落下の瞬間に、頭の位置が下がっていたり、少し前後左右に回転していたり、条件が異なる状況の全てにいろんな技で対応しているのだろう。
ネコひねりは、水泳の高飛び込みでも研究材料になっていて、人間も0.5秒で一回転できるようになった。
空中で身体をひねる競技は多い。走り高跳びなども猫の宙返りが人間の宙返りの新たな可能性を開いてきているのだ。
NASAでも無重力で宇宙飛行士が向きを変えるのに役立てるべく研究していた。
本書は、500ページ弱あって、かなりのボリューム感がある。
「ネコひねり」以外の話題もかなりあるので、興味がない箇所は読み飛ばしてもいい。
猫の落下に関しては、高層ビルが出来てから猫の高層階からの落下も当然増えたが、
不思議なことに8階以上の高い階からの落下の方が怪我の箇所が少なくなることが分かった。
この理由の解明と考察も面白い。
落下以外では、猫の水舐め行動。
舌を水面に少し付けてから素早く引っ込める。すると、空中に細い水柱が立ち上がる。その水柱が落下する前にかじり取る。
という表面張力を巧みに利用した技も持ち合わせているとは知らなかった。
最後に、本書の著者からのお願いを書いておきます。
『どうか、猫を高いところから落とさないでください。』
・うまく宙返りできない猫もいるかも知れない。
・落とした人に恨みを抱く猫がいるかも知れない。
くれぐれも、お宅のネコちゃんで落下実験はなさらぬように!