シリコンバレーのベンチャーキャピタルSozoventures協力の下、ベンチャーキャピタル業界の産業構造や特性、業界の現実を説明した上で世界で活躍する30ものベンチャーキャピタルの投資家たちのインタビューをまとめた本。
日本ではベンチャーキャピタルと言っても会社がギャンブルをやっているようなもの
...続きを読むと捉えられがちだが、シリコンバレーを中心とするベンチャーキャピタル業界ではそれ自体産業と捉えられていて、その規模も2020年で3474億ドルだそうだ。(因みに日本は45億ドル)
もちろん上場企業に投資するわけではないのでその投資先の過半数は元本を割り込み、10倍以上のリターン案件は4%ほどというハイリスクハイリターンの投資で、勝ち組ベンチャーキャピタルはトップ1%しかないのであるが、その投資は決して運任せではない。
それぞれベンチャーキャピタルには各々の強みがないと生き残れず、例えばもと研究者でその研究分野の事業評価に強みを持つとか、ある特定の地域の消費者の嗜好や法律に通じているとか、人脈が豊富でサポートできるなどの強みを活かしてカネとしての投資のみならず営業面や知財面、技術面や法務面等のサポートを通じ元本10倍以上のホームラン案件を増やすべく努力している。
本書で取り上げている代表的な30のベンチャーキャピタルの特徴もSaaSやFintecに強いものから一流の科学者を集め、仮説を持ち寄り、創業のヒト・モノ・カネの段階から作り始めるタイプのもの、インド・南米など特定の地域に通じているタイプのものなど様々だ。
ただ、金融緩和が終わり、金利上昇の局面に入ろうとしていることや、米中対立やウクライナ戦争のように世界で分断が進んでいることなどを考えるとリスクマネーの供給もかつてほどには進まないようにも感じる。しかしながら脱CO2の問題が世界の課題となったり、IT革命に続くAIの革命で旧来型の産業が一部転換しつつあることもまた事実で、その点ではリスクマネー供給による社会変化が望まれる。
ただ、日本としてはこういったベンチャーキャピタルの役割を商社が果たしていたり、親会社の新事業として子会社を立ち上げてそれを親会社がサポートすると言ったような日本的なイノベーションも存在しているように感じた。