だれにでも読みやすく書かれています。
岩手県岩泉町で山地酪農(やまちらくのう)をされている『なかほら牧場』の中洞さんが牛にとっても人にとっても自然な酪農を目指し、山での放牧を行う山地酪農を定着させるまでのお話です。
これを読んでとても衝撃を受けました。
今まで何も考えず、私たちが飲んできた牛乳、そしてその牛乳を搾られる牛の暮らし、このままで大丈夫かな、と不安になりました。
人間でもそうですが、母親の食べ物によって母乳の味が変わり、脂肪分を多く含む食事をとる母親の母乳はドロッとしていて、魚や野菜を中心の食生活をおくる母親からは後味すっきりな母乳が出るので、本来牛が食べている草ではなく、飼料を調整して、牛乳を多く作れるような配合になっている餌を食べさせられる牛からの牛乳の味が変わるのも納得。
牛乳を飲む国民の為に、量、成分優先の牛乳を作るために、牛を無理をさせて、その結果、20年生きられるはずの牛の寿命は4分の1の5年ほどだそうです。
子牛も生まれてすぐに母親と離され、せまい牛舎から出ることもできず5年も管理されて死んでいく牛。
出産も人工授精で管理されていて、飼料によるものなのか、異常のある子牛も生まれてくるとのこと。
飼料もサイレージも輸入もので腐らないように、効率が良くなるように色々な操作をされて、そんな牛から絞られた牛乳を常時飲む私たちに、何も起きないはずない。
山地酪農は、自然に大部分を任せ、牛にストレスがかからない、放牧によって糞尿が堆肥になり、肥沃な土地になり、そして山の管理にもなる。
スローライフって色んな意味で大切で、人間は便利さ、効率の良さだけを追求していっては、色んな意味で、未来は狭まっていくのだろうな、と感じた1冊。
自然の牛乳、大量生産できないので、普通の牛乳より割高にはなるけれど見つけたら買って、志を持った酪農家を応援したいと思いました。
中洞さんは、近代酪農が増えていく中、地道な山地酪農に取り組み、それが理解されるまでずいぶんと辛い、苦しい時代を過ごしたそう。すごい人です。