SFの巨匠スタニスワフ・レムの名作。『エデン』、『ソラリス』と並ぶ、ファーストコンタクト三部作の一角。国書刊行会"スタニスワフ・レム コレクション"より、ポーランド語原典から訳された新訳版が発売されたので、この機会に手に取ってみた。
琴座の惑星レギスIII着陸後に消息を絶った宇宙船コンドル号を捜索
...続きを読むするため、姉妹機であるインヴィンシブル号がレギスIIIに降り立つ。この砂漠で覆われた惑星で乗員らが目にしたのは、荒廃した"都市"の跡、そして"何か"の襲撃を受けて沈黙したコンドル号だった。コンドル号に一体何が起こったのか。この"砂漠の惑星"が抱える秘密とは――――。
「未知の惑星で目の当たりにする、想像を超えた"進化"。」
本作では、『ソラリス』で描かれた「宇宙生命体=意思疎通の出来ない異質な存在」というスタンスが継承されている。そこに人類が考えるような"敵意"はなく対峙すべき理由もないのに、"仇討ち"と息巻く乗員に違和感を抱く主人公の姿が、レムの宇宙生命体観をよく表しており印象的。
「宇宙生命体=意思疎通の出来ない異質な存在」と、作品のテーマとしては『ソラリス』と同様だが、作風は「"静"の『ソラリス』、"動"の『インヴィンシブル』」といった印象。コンドル号を襲った謎に迫るスリリングな展開から、現れた"未知の存在"との壮絶な戦いと、非常に映画映えする内容となっている。(個人的には、『ソラリス』の方が好みだったが。)
巻末には、本作への理解を深めることが出来る非常に良い解説が付いているので、本編で終わらず最後まで目を通してもらいたい。