作品一覧

  • 精霊に捕まって倒れる――医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突
    4.6
    1巻4,400円 (税込)
    生死がせめぎ合う医療という場における異文化へのまなざしの重さを、感性豊かに、痛切に物語る傑作ノンフィクション。ラオスから難民としてアメリカに来たモン族の一家の子、リア・リーが、てんかんの症状でカリフォルニア州の病院に運ばれてくる。しかし幼少のリアを支える両親と病院スタッフの間には、文化の違いや言語の壁ゆえの行き違いが積もってしまう。モン族の家族の側にも医師たちの側にも、少女を救おうとする渾身の努力があった。だが両者の認識は、ことごとく衝突していた。相互の疑心は膨れ上がり、そして──。著者は、医師たちが「愚鈍で感情に乏しい、寡黙」と評したリアの両親やモンの人びとから生き生きとした生活と文化の語りを引き出し、モン族の視点で見た事の経緯を浮かび上がらせる。その一方で医師たちからもこまやかな聞き取りを重ね、現代的な医療文化と、それが医療従事者に課している責務や意識が、リアの経過にどう関わっていたかを丹念に掘り起こしている。本書の随所に、異文化へのアプローチの手がかりがある。原書は1997年刊行以来、アメリカで医療、福祉、ジャーナリズム、文化人類学など幅広い分野の必読書となった。医学的分類の「疾患」とは異なる「病い」の概念も広く紹介し、ケアの認識を変えたとも評される。全米批評家協会賞受賞作。
  • 精霊に捕まって倒れる――医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突

    Posted by ブクログ

    2019年にSlate誌「この四半世紀の最も優れたノンフィクション50作」に選ばれた作品。初出は1997年で、15年後の改訂版を日本語訳したもの。
    長距離フライトの往復で読み切った。初めて飛行機の中の時間が速く過ぎたと感じた。

    モン族という現在のラオスやタイ、ベトナムの山岳地帯を起点とする家族と、その家族の一人である「患者」を診る米国の医療者たちの関係が中心に描かれる。読み終わった後には、立場の違いなく、様々な登場人物に畏敬の念を抱いた。

    モン族の生活や背景、歴史事情、医療行為など、高度で入り組んだ理解が必要なテーマがいくつも折り重なっているのに、ほとんどの前知識を必要とせずにこの本を読む

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    2023年12月20日
  • 精霊に捕まって倒れる――医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突

    Posted by ブクログ

    とてもおもしろかった。前のめりで読んだ。

    最新刊、と思って読んでいたけど、これは「15周年記念版」の訳で、最初に出版されたのは、1997年なんですね。
    帰化や難民受け入れについては、ずっとほぼ鎖国の日本ではまだまだ実感すら追いついていないテーマなんですが、アメリカではもうおなじみのテーマなんだろうか。それとも、やっぱりアメリカでもまだまだなんだろうか。そんな疑問を感じながら読んだ。
    でもたぶん、こういうのはどこの地でもどの歴史でもどの民族にとっても、きっと永遠にいつまでも新しいテーマであり続けるんだろうな。

    しかし、異文化受け入れに対して、自分は柔軟な方・・・と思いたいのはやまやまだが、こ

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    2022年10月02日
  • 精霊に捕まって倒れる――医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アメリカにはラオスやベトナム、タイ北部に住むモン族が難民となって住んでいる。
     モン族は中国では苗(ミャオ)族として知られる山岳民族である。無文字で、山地で農業、狩猟をして暮らしている。
    家も自分達で建てる。薬草で病気を治療する。
    そして精霊信仰をしており、生活の節々で精霊が顔をだす。
    この本はアメリカに亡命したばかりのモン族の夫妻に子供がうまれ、その何番目かの娘がてんかんの症状を発症しアメリカの病院に運ばれ、治療、退院を繰り返すなかで不可避的におこった文化の衝突のあらましを、多くの関係者者に9年にわたりインタビューをして書かれたものである。
     アメリカ人からみたら原始的で頑迷でコンプライアン

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    2022年05月12日
  • 精霊に捕まって倒れる――医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突

    Posted by ブクログ

    精霊に捕まって倒れる。この不思議なタイトルは、モン語の〈カウダペ〉の直訳だ。突然けいれんして失神する事象を指す。それはつまり、医学用語でいう「てんかん」のことである。

    1982年、ラオス難民のリー家の末っ子で生後3カ月のリアが、てんかん症状で病院に運び込まれた。その日から繰り返される入退院。その度に医師たちは、投薬をはじめ近代医学を駆使して懸命に救命を試みる。一方で、モン族の父と母は、悪い精霊に娘の魂を奪われたのだと理解する。そして、自分たちの儀式や伝統医療を認めないアメリカの医師たちに不満を抱き、彼らの薬こそが娘の回復を阻んでいるのではないかと不信感を募らせる。やがて、両者のすれ違いは、リ

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    2021年11月18日
  • 精霊に捕まって倒れる――医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    難民としてアメリカに移住してきたモン族一家に生まれた赤ちゃんリアが、てんかんの発作を起こしたところからこの一家と病院との長い付き合いが始まる。医師は当然てんかんを脳神経の異常であり薬によって治療するものととらえていたが、両親は度重なるてんかんの発作を「魂を喪失した」ことによるもので、取り戻すためにはチネン(シャーマン)の供儀などが必要だと考えていたのだ。リアを守りたいという強い思いは一致していたものの、言葉の壁以上に世界観や文化の違いが大きすぎてお互いの考える治療はうまく進んでいかない。
    両親の投薬不履行が虐待とみなされて裁判所命令が下り、リアが里親の家庭に一時預けられるという大事件の後もその

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    2021年10月23日

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