推しがおすすめしていた本を読んだり、推しが主演する作品の原作本を読んだりしたことはあるけど、推し自身が書いた小説を読むというのははじめての体験だった。読んでいるとなんだかケンチさんの頭の中を覗き見しているような感覚になって、こんなものを読ませていただいていいのだろうかとすら思った。ケンチさんが選んだ
...続きを読む言葉を、ケンチさんがつづった文章を300ページ超も読めるなんて贅沢すぎる!
小説とはいえケンチさん自身の実体験がもとになっている作品だから、断片的に聞いたことがあるエピソードもいくつか登場して、点と点が大きなうねりで繋がっていくような感じがした。「鉄平」との関係性はさすがとしか言いようがない。完全フィクションだと言われたほうが納得いくようなふたり! すごい!
読んでいてなにより衝撃だったのはダンスシーンの描写。全力で踊っているときの肉体的、精神的な感覚がありありと描かれていて、躍動感というか疾走感というか、踊ることを生業としている人がダンスを描くとこうなるのかと感動した。読んでいて息切れしそうだった。音楽という形のないもの、ダンスという極めて身体的な行為を文章に落とし込むのって簡単じゃない。一冊を通してすごい疑似体験をさせてもらった。
【読んだ目的・理由】ケンチさんの作家デビュー作が読みたかったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆3.9
【一番好きな表現】手放していいんだ。頭で考えるな。身体はしっかり覚えているから。(本文から引用)