尾高朝雄の『国民主権と天皇制』が学術文庫入りしたときは驚いたものの、天皇制に関連する本だからなあとまだ納得感があったが、今回は何と清宮四郎の著作の文庫化、吃驚!
法律系履修者以外の人にとっては、"誰、その人?"という感じだろうが、有斐閣法律学全集の「憲法I ー統治の機構ー」は、昭和50年代の憲
...続きを読む法の基本書と言われていた。(もっとも学生にとっては、宮沢俊義の「憲法II ー基本的人権ーの方が興味があり、本書の記述をあまり面白いとは思わなかった人が多かったと思う。)
そのような著者の論考を、東北大学で薫陶を受けた樋口陽一氏が編集した論集が、本書である。
大きく二部構成で、第一部は、日本国憲法の思想と原理と題して、10編ほどが収められる。現行憲法の拠って立つ権力分立制、多数決がなぜ正当性を有するのか、解散権の根拠など、戦後憲法に即した考察がまとめられている。
第二部は、憲法理論の基礎と題して、主として若い時代の原理論的な論考が収められている。師であるケルゼンの純粋法学、根本規範の考え方等を参照枠としつつなされる分析は、抽象度が高く、安易な理解を寄せ付けないが、大変読み応えがある。
法学を学んだことのない人にはハードルが高いと思われるが、第一部の中から興味あるものを読み始めるのも一策であろう。