臨床と医学教育の現場に長くたずさわられた著者が、医療現場でトラブルの主要な原因となる「患者と医師のコミュニケーション不全」に焦点をあて、具体的な事例を元に、その原因と改善方法について著している一冊です。
本書は医師・患者のそれぞれの視点で、医療に詳しくない人にもわかりやすい言葉で、具体的な事例をも
...続きを読むとに著されており、純粋に、より良い医療を実現することを目的としてものだと思います。
もちろん、上記の本来の目的にもかなった一冊ではあるのですが、扱う題材が誰にでも身近な「病院での診療」であるため、「医療以外の分野でも(例えばビジネスや普段の生活でも)発生しやすいコミュニケーション不全」の具体事例集としても、とても興味深い内容です。
我々はお互いが持っている、「世界が違う」「文化が違う」「ものの考え方が違う」「価値基準が違う」「情報量が違う」「情報の質が違う」「目標や目的が違う」相手にも、正しく伝えなければならない場面に遭遇することは珍しいことではないと思います。
そのような場面で、「気をつけなければならないこと」に我々は無意識の内に対応しようとし、あるいは意識して対応した場合でも、やはり「正確に伝えられなかった」という経験は誰にでもあると思います。
その典型的な事例がわかりやすい形で、医療現場、つまり本書の中に詰まっていると感じました。自分の専門分野・経験からは気が付きにくい「コミュニケーション不全の原因と対処法」について、いくつかのヒントを提供してくれる良書だと感じます。