「シルクロード」は、1979~80年にNHKと中国中央電視台が、中国の西安を出発点に、中国領内シルクロードを共同取材し、1980年4月から全12回シリーズ「日中共同制作シルクロード 絲綢之路」として1年間放送された特集番組である。特に、外国メディアによる中国領土内のシルクロードの取材が認められたのは
...続きを読む、この番組が初めてで、視聴率はほぼ20%を超えるなど、大きな関心と反響を呼ぶと同時に、この番組が火付け役となり、以降の所謂シルクロード・ブームが起こった。また、番組は、日本のみならず、38ヶ国で放映された。
因みに、12回のタイトルは以下である。①遙かなり長安、②黄河を越えて〜河西回廊1000キロ〜、③敦煌、④幻の黒水城、➄楼蘭王国を掘る、⑥流砂の道〜西域南道2000キロ〜、➆砂漠の民〜ウイグルのオアシス・ホータン〜、⑧熱砂のオアシス・トルファン、➈天山を貫く〜南彊鉄道〜、⑩天山南路・音楽の旅、⑪天馬のふるさと〜天山北路〜、⑫民族の十字路〜カシュガルからパミールへ〜。
本書は、その「シルクロード」取材班団長で、NHK退職後もシルクロードの研究を続ける中村清次(1939年~)氏が、シルクロード研究の最新の成果を、NHKカルチャーラジオ/歴史再発見テキスト『シルクロード10の謎』、『続・シルクロード10の謎』としてまとめたものに、加筆・改稿を加えたものである。
私は、番組放映当時は10歳台で、この番組を家族で毎月楽しみに見ていたし、今でも喜多郎のアルバム「シルクロード(絲綢之路)」をたまに聞くのだが、今般書店で本書を目にし、思わず手に取った。
そして、半分懐かしく(とは言っても、番組の内容を覚えているわけではないので、楼蘭や敦煌などの地名の響きに懐かしさを覚えるくらいだが)、また半分は、二千年も前の事象がこれほど判明していることへの驚きと、その一方で、古文書に記された都や遺跡が未だに発見されず、数々の謎が今なお砂に埋もれたままであることに対する一種のロマンを感じざるを得ない。(尤も、「楼蘭の美女」や「さまよえる湖(ロプ・ノール)」などのテーマを除くと、専門的な内容も多い)
日本文化の源流ともいえる「西域/シルクロード」についての最新の研究成果を知るために格好の一冊である。
(2021年5月了)