2021-05-09
力作。人を殴り殺せるほど厚い文庫本だが、読み出したら止まらない。一見関係のなさそうな寄り道ばかりに見えて、それが1つに集約していくのには感動すら覚える。
そしてその集約先が、そのように読んでしまうことこそが問題であるという、冷徹な事実。考えさせられる。
あとがきにある、「読者た
...続きを読むれ消費者になるな」という提言もなかなかに重い。
戦後の、国警と自治警の指揮系統の違いははじめて知ったし、司法省と内務省のせめぎあいもあらためて知ることが出来た。
そしてそれが今現在も明らかに影響を残していることにも思い至る。(本書では現在への影響についてはほぼ触れていない)
進化の無目的性を強調しつつも、より公正にという目的を志向した合議を提案するなど、自家中毒に陥っている部分もないことはないが、少なくともそこに自覚的な分信頼がおける。
いや、そのような読み方こそ、物語の形でしか理解ができない人間の特性に引きずられているのかもしれない。
暗いニュースに心を痛める善意の人々、身勝手な犯罪に怒りを覚える人々、世の中の出来事に実感を覚えられない人々、必読の書である。