ようやく読み終わったー。
大学の参考図書として購入して、ついでに読んでみた一冊。
20世紀のファッション史を、10人のデザイナーごとに読み解き、分析し、評価する本。
特徴はその評価基準が「いかにデザインが優れているか」ではないこと。
たとえばディオールの章だが、なぜディオールのデザインが受け入
...続きを読むれられたか、それはここのデザインがこうでこうで、という分析は多くない。
むしろ、マーケティングという分野でディオールのことを論じている。
「10人の偉大なデザイナーは、なぜ偉大なのか」ではなく、「10人の偉大なデザイナーを、"偉大"に押し上げた時代の気分と背景」の本だ。
以下は私の印象に残った文の一部抜粋。
「性犯罪を誘発すると非難がましい視線を投げかけながら下心を抱いていた」
マリークアントによって1960年代の日本にミニスカートが持ち込まれ、女性たちが足を出したファッションをすることに対する男性週刊誌の態度。「痴漢されたくなければミニスカート履くな」とか言う男もいる今と変わらないって、1960年代から価値観アップデートされてないってこと?
「流行とは時代の美意識に自分を近づけるための規範のひとつに他ならない」
確かに。そう思う時点で超消費社会の一員なのだと実感。
「戦後社会が目指していた「輝かしい未来」の実像が明らかになると、新しいものをつくるより失われてしまった素朴な民族文化や近過去への哀愁に駆られる風潮となり、」
バブルが弾けた後の日本(というか最近)にも同じことを感じる。テレビではPUFFYや工藤静香が歌い、ルーズソックスやギャル文化が再燃し、(ギャル文化に関しては令和らしく手が加えられているが)、みんながみんな「昔の楽しそうな日本」に憧れ、模倣しているような空気。今は未来への期待よりも過ぎ去った近過去への哀愁の方が大きい。
みんなどこか悟って、未来を諦めている。