普段飲んでいる牛乳や、食べているチーズやヨーグルトなどの乳製品。
今や日本の食卓にはなくてはならない存在となっているが、こうして食卓に乗るのはごく最近のこと。
しかも、ヨーロッパ文化の影響を強く受けているため、実は私たちは乳文化のごく一部しか知らない。
1万年の歴史があり、しかも文化圏ごとに全く違っ
...続きを読むた表情を見せる乳文化の美味しくて不思議な世界を辿ってみよう。
まず、ヒトの母乳を考えてみよう。
あの真っ白なほのかに甘い液体は、母親の血液で作られている。
どこでどうやって赤が白になるんだ!
ウシは1リットルの乳を出すのになんと500リットルもの血液を必要としているという。
著者が感じたように、私も偉大さと尊さを感じる。
この乳というものは、人間のように年中繁殖期ではないので、ある一定の期間しかとることができない。
それをどうやって保存していくか、ということが課題となる。
西アジアではヨーグルト、バター、バターオイルの順に加工され、チーズはカチカチの塩辛いものが出来上がる。
対してヨーロッパでは熟成の方向へ向かう。
カビを使用するという、高温多湿のアジアとは全く異なる方向へ!
その一方、双方の技術が重なり合った地域も存在するのだ。
この文化の広がり、技術の広がりは歴史を考える上でとても面白く、興味を惹かれる。
搾乳とは素晴らしい発明だった(ヒトにとっては!)。
母が子にしか許さない行為を利用して、それを自らの栄養にして、さらに子孫を繁栄させる。
この発明があって、いまの「おいしい」があるのだ。
私がミルクを飲んで、それが血液になって、さらにそれが子に与える乳となる。
命の営み、生命のつながりを考えるととても感慨深い。