日本の物価が世界の中で高いと言われたのも今は昔。
この本での一貫した主張は、バブルがはじけてから日本の物価が安いこと(デフレが続いている)、所得も低いこと('97→'19の実質賃金は約1割下がっている)だ。OECD諸国の中で日本だけが下がっており、購買力の比較ではお隣韓国にも逆転されている。そしてそ
...続きを読むの結果、特にサービス行において生産性が低いことにつながる。(何しろ低賃金の非正規雇用者が多い-4割)
日本の価格が安くなった原因は、長いデフレによって、企業が価格転嫁するメカニズムが破壊されたからと言う。値上げが出来ない→賃金があがらない→消費されない→物価あがらない⇒日本の購買力が低下 と言うメカニズムが完成しているようだ。
では何故値上げが出来ないのか?
①日本の労働慣習では、従業員を柔軟に解雇出来ないので人件費確保が至上命題となり、価格を下げても売り上げの絶対額を確保しようとする。 ②品質・性能のユニークさで競うことが出来ず、価格競争で生き延びてきた。ことが挙げられている。
平均賃金が上がらない理由には、停滞する生産性に加えて、大企業の中高年齢男性の賃金が下がったことも挙げられる。企業は若手の人材争奪戦で、給与を上げる原資として中高年の賃金を抑えているのだ。更に最近では黒字であるにも関わらず、開発予算を捻出するためにリストラも行われてきている。(製薬会社が典型的)
安倍元首相要請した「官製春闘」で2%ベアの意向を示したのは、「お友だち大企業」に過ぎず、世の中全体には広がらなかったため、物価上昇につながらなかったというのが労働界の大勢の見方だ。
また海外と異なり、もらえる賃金に対して従順であること。声を上げれば評価が下がると考えてのことだろう。この背景には、終身雇用型でキャリアを積んでジョブホッピングすることが普通で彼らの受け皿もある海外とは習慣が違うこと、労働者もその気で自分のスキルを高めること があるのだろう。
で、安い日本だ。特に最近の円安。海外の富裕層から今までも不動産の購入があったが、今後は益々加速していくのではないか。今まではアジアの盟主と自画自賛していたのだろうが、もはや見る影もない。実際に海外の購買力に追い越され、いろいろな食材も買い負けているそうだ。
そんな日本に優秀な人材が集まる訳がなく、それ以上に人材が流出していく。
暗澹たる気持ちになるが、規制撤廃や労働慣習の改革等が政治主導で行われるべきではないかと感じるところだ。