ユーザーレビュー 草原の制覇 大モンゴルまで 古松崇志 学生時代に触れた中国の歴史では、遊牧民の台頭はどこか傍流のような扱いだったと記憶している。 しかし本書ではその印象が覆された。 騎馬を中心とした機動力ある軍事のみならず、支配側の風習などを保護する必ずしも強権ではない統治。 東ユーラシアを覆うほどに版図を拡大したのもむべなるかな、と思わせられる。 ...続きを読むそしてそのように隆盛を極めていても、内紛は抑えられない。これは人類の性か。 私のように、「元寇」でしかモンゴル王朝を知らない人間ほど読み応えのある一冊だ。 Posted by ブクログ 草原の制覇 大モンゴルまで 古松崇志 岩波新書のシリーズ中国の歴史第3巻は「ユーラシア東方史」という枠組みでの歴史叙述であり、これまでになかった「中国史」の大胆な読み替えが示される。何しろ第1章から「拓跋(タブガチ)とテュルク」である。北斉、北周、隋、唐は遊牧国家である拓跋国家の系譜に連なると! 隋や唐までも! そして、第2章は「契...続きを読む丹と沙陀」。契丹は聞いたことあるが、沙陀なんてまったく知らなかったが、唐が滅びたあとの「五代」のうち後唐以後後漢まで連なるテュルク系武人の王朝で、さらにその後の後周、北宋も沙陀連合体(遊牧部族)に属した漢人武人王朝と見做すことができると説明される。 今までの常識だと中原の文明化された漢民族vs.北方の野蛮な遊牧民という図式の中でこの時代は捉えられてきたように思うが、なぜこのような読み替えがなされうるかと言えば、それぞれの王朝が「遊牧と農耕」の境界地帯を基礎としていたからだというのが本書の肝の一つである。大まかな見取り図は第1章で示されているが、この辺まで読んで第1章に戻るとわかりやすい(と個人的には思う)。 第3章「澶淵の盟と多国体制」では世界史の受験知識でも重要な「澶淵の盟」が出て来てホッとするが、その意味づけ、解釈はまったく異なっていた。当然、次の第4章の「金(女真)の覇権」も受験知識的理解ではおよばない深さと広がりがある。ある意味、第5章の「大モンゴルと中国」でのモンゴル帝国の出現が必然と思えてくるそれまでの遊牧国家の発展が詳述された本書は、現代の中国を考え直すための必読の書であろう。 Posted by ブクログ 草原の制覇 大モンゴルまで 古松崇志 大元ウルスが物凄くて、これ以外の歴史の出来事がどれも小さく見えてくる。 特に面白かったのは安禄山の話。通訳から頭角を表して強大な軍閥を築き上げ、そして楊貴妃の養子になる。めちゃくちゃ興味を惹かれた。 Posted by ブクログ 草原の制覇 大モンゴルまで 古松崇志 岩波新書のシリーズ中国の歴史の第3巻で、北方草原地帯の遊牧民に焦点を当て、ユーラシア東方史という枠組みで中国史を捉え直している。時代としては、大体、五胡十六国時代から大元ウルスの時代までを扱っている。 従来の中国王朝交代史では周辺扱いされがちだった草原地帯の遊牧国家(契丹、金など)を中心に据えたダイ...続きを読むナミックな興亡史で面白かった。本書で扱われている時代についていえば、いわゆる中華王朝よりも草原地帯の遊牧国家こそが時代の主役だったということがよくわかった。 拓跋国家、沙陀系王朝、澶淵体制といった概念は、本書で初めて知り興味深かく思った。特に、唐朝が、拓跋国家としてまさしく遊牧国家と位置付けられる存在だったというのは目から鱗だった。 Posted by ブクログ 草原の制覇 大モンゴルまで 古松崇志 シリーズ中国の歴史の第3巻。第2巻での江南の歴史の叙述から一転、ユーラシア大陸中央部における雄大な騎馬民族興亡史が描かれる。多様な部族の興亡の中から大モンゴルが誕生し、ユーラシア全体を制覇する様はまさに圧巻。中国の何たるかを知ろうとするには、多元多様、俯瞰的な視点が必要であるとの本シリーズの趣旨に深...続きを読むくうなずく。 Posted by ブクログ 古松崇志のレビューをもっと見る