ワイドショーでも報じられていた(ように記憶している)「投資ジャーナル事件」。
子どもながらに中江茂樹氏と関係を疑われたアイドルの写真だけが強烈に記憶に残っている。自分の記憶の中では、「ニャンニャン事件」とほぼ同列の扱いだった。
かくして名前だけは知っている事件だったのだが、昨年中江氏が火事で死去
...続きを読むした際に、ニュースで当時の模様も報道され、概要を理解した。で、少し前に、中江氏の本が新書の形で出版されたというので、本書を手に取った。
中身は文句なしに面白い。
是川銀蔵ら相場師・仕手筋の有名人から、泰道三八、南部靖之、渡辺喜太郎といった実業家、田中角栄ら著名政治家、三浦甲子二、竹井博友といったメディアの“怪人”まで、これでもかと多彩な人脈が登場する。
驚くことに中江氏が会社四季報を手に取ったのは小学5年生。高校時代には、株の信用取引にまで手を出していたという。
昨今、「子どもの頃から金融リテラシー」が叫ばれているが、「中江氏みたいな人物が大勢登場するかも……」とか考えてしまった。
当時は大手も含めて証券界はカオスの時代。投資顧問業を規制する法律ができたのも、中江氏のような突出したヤバい面々が乱立していたことが背景にあったことがよくわかる。
惜しむらくは、ほぼ中江氏へのインタビューや公になっている書籍などから構成されている点だ。
存命の関係者はいるにも関わらず、本人の証言が得られていない。まだまだ現役感あふれる経済人もいて、取材が難しかったことは想像がつくのだが、別の角度からの証言が得られればさらに本の厚みが増すかも、とは読み手の無責任な妄想である。
晩年の中江氏はかなり困窮していたようだ。多くの相場師同様に相場観が失われて最後は没落したのかと思いきや、終盤に驚きの証言が出てくる。
「今すぐにでも勝負したいと気になっているのは半導体市場の動き」がソレ。
今まさに半導体不足で、世界中でモノが作れなくなっている。死の間際まで、有望銘柄を見抜く力は衰えていなかったのだ。