〈シリーズ中国の歴史〉の第二巻。
本シリーズは、巨大な中国、多元多様な中国の歴史を、グローバル化の現代にふさわしい形で叙述していくことを目指している。
本書の射程は、古代から南宋末に至る、揚子江周辺の江南地域を巡る歴史である。
これだけ長期にわたる時間軸なので、どういったところにフォー
...続きを読むカスを当てるかがポイントとなるが、魏晋南北朝時代から、隋唐の統一王朝を経て、五代から北宋、南宋へと至る政治史上の主要な出来事には触れつつも、古典国制の受容と変容、南北朝時代の貴族制、宋代の科挙官僚の登場の意義、江南の農業、商業の発展状況等が、分かりやすくまとめられている。
特に、中国における中間団体の不存在が社会的流動性を高め、人つなぎの論理として、個人間の信頼関係の連鎖=「幇の関係」を作ってきた、そしてそれは日本やヨーロッパとは大分異なるものである、との指摘はなるほどと思った。それが、歴史の進み方から、社会構成の違いにも影響しているのかもしれないと思われるからである。
現在、中国においては、発掘等による出土資料の増加に伴い、中国史が盛況を来し、歴史の書換えも進んでいるという。そうした最新の成果にも一部触れることもできて、大変ありがたい。