■第1章のまとめ
・心は脳という臓器が作り出すもの
・脳科学は心理学の一分野に過ぎないが、科学的に心を扱う手法が充実してきた
・現在では神経科学、進化、遺伝学、精神医学、行動学、認知科学、社会学など様々な側面から心の働きが研究されている
・生物としての体の働き、認知や知覚、気分などに与える影響、育っ
...続きを読むてきた環境や文化、現在を取り巻く社会、人間関係などの心理に影響する
・脳の生物学的な側面、ハードウエアとしての特性を理解することも欠かせない
・心理学と神経科学が互いの知見を持ち寄って、歩み寄ることが大事
■第2章のまとめ
・脳は神経系のうち「中枢神経系」の一部。体の神経は「末梢神経系」に分類される
・脳も細胞からできている。脳細胞は「神経細胞」(ニューロン)と「グリア細胞」からなる。ニューロンは電気的な信号を発生し、長い突起によって他の細胞に情報を伝達するネットワークを作っている
・ニューロンは電気的な信号を発生するが、他のニューロンと接合する部分では電気信号を化学信号に置き換えて情報を伝達する。これによって情報の質を変化させる
・脳には様々な部位があり、それぞれが役割分担をしている。その大半は、生命の維持や姿勢の制御など、意識的には制御できない全自動的な働きである
・大脳皮質は体からの様々な入力を分担して処理しており、これを「機能分担」と呼ぶ。特に前頭連合野のある「前頭葉」では言語や精神、人間らしい活動や思考を司っている
■第3章のまとめ
・生きものの体には様々な伝達様式がある
・シナプス伝達のほかに、ホルモンや自律神経系による全身の調節や、神経修飾物質による広範囲調節系がある
・広範囲調節系は、特定の標的細胞を持たない拡散性伝達によって広範囲のニューロンとグリア細胞を同時に活性化する
・広範囲調節系は生存に必須なものから人間らしい生き方を支援する機能まで、さまざまな部分を極めて絶妙なバランスで調節している
・広範囲調節系は、生存に必須な生理機能だけでなく気分などの精神機能にも関与する可能性がある
・脳と身体の機能は密接に関わっており、健康な体と心の働きには臓器と脳の連携が不可欠である
■第4章のまとめ
・脳という臓器は様々な理由で病気になるが、メンタルの不調も同様にの脳の疾患であると理解すべき
・心が病んでいるとき、脳のアイドリング状態を担う神経回路が過剰になっていて、後悔や不安を過度に反芻している状態になっている
・脳の活動が過剰になる要因は脳の疾患などによる「器質性」、遺伝的な問題やモノアミンの異常、ウイルスや炎症などによる「内因性」、ストレスによる「心因性」に分けられる
・いずれも気合で乗り越えられるようなものではなく、そのメカニズムを正しく理解することが必要
・体は様々なストレスへと対処するために脳や体を柔軟に変化させる力を持っている
・しかし長期間、過剰なストレスに晒されると実際に細胞が死滅したり体の機能が低下したりする
■第5章のまとめ
・生物が共通に持っている原始的な反応を「情動」と呼ぶ。「感情」は情動を言語化して解釈したもので人間らしい心の働きを指す
・悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのかはいまだに議論が続いているが、体に起きた反応の納得のいく原因をみつけたり解釈したりするのは脳の仕業
・ポジティブな情動を生み出す脳の仕組みは「報酬系」という。「ドーパミン」が重要な働きをしており、モチベーションに深くかかわっている
・予測した報酬を上回る報酬を得たい気持ちは生存に有利に働いたが、これが行き過ぎると「ギャンブル依存症」や「行動嗜癖」になってしまう
・「人から認められたい」「社会と繋がりたい」「自分を実現したい」というのは人間らしい欲求だが、それが叶わなかった場合に心を守る心の働きも備わっている
■第6章のまとめ
・「自分を傷つけられるのは自分だけ」であり、外界の情報をどうやって脳に届けているか、そのフィルターの性質を知る必要がある
・偏った思考や歪んだ認知は「認知バイアス」と呼ばれ、ネガティブなことを増長するようなものに囚われやすい性質を私たちは持っている
・高度な共感能力ゆえに、あらゆるものに心を感じるため、他人の気持ちに敏感になってしまうことがある
・「スキーマ」と呼ばれる理論的枠組みを作り上げて体験を解釈し、調整を繰り返していくことで、世界の認識を発展させている
・そもそも認知の発達や記憶の整理の仕組みとして「カテゴリー化」したり、「レッテル貼り」をしてしまう
・信頼のおける他者の言葉によって痛みを軽減したりする効果が得られるのは、注意を分散させる効果があるため
■森田正馬のメッセージ
・考えるのではなく、見つめること
・気分ではなく目的を最優先すること
・注意を一転に向けるのではなく、分散させること
・自然体であることを大自然に学ぶこと
・~ねばならないではなく、事実を受け入れてあるがままを受け入れること
■第7章のまとめ
・「プラセボ」に効果があるのは恐怖や不安からの予測に変化を与えるためかもしれない
・複数の活躍の場を持つことは、注意を分散することになり、ストレスの影響を軽減できる可能性がある
・重要なのは自分が意図したとおりに影響を及ぼしているという実感(自己効力感)
・todoリストを活用して、小さな成功体験を積み重ねよう
・過去に成功体験を共有した人と無責任なおしゃべりをすることは最高の精神安定剤。夢のある未来に思いを馳せることも重要
・一人旅に出たり道に迷うことで脳のアラートシステムを活性化することも時には重要。孤独を恐れず一人の時間をとるのがよい
・マインドフルネス瞑想をはじめとする「認知行動療法」は、科学的根拠のある健康法。意識を「今ココ」に集中させることで、ぐるぐる思考回路の活動を低下させ、脳を休ませることが重要。
「バイオフィードバック」や「ニューロフィードバック」は、最新のテクノロジーを利用して自分の心の状態を知ることができる技術。今後の発展に注目
■知人者智、自知者明(他人を知るものは賢いが、本当に聡明なのは自分自身を知るものである)