861
神田松鯉(かんだ しょうり)
1942年生まれ。群馬県前橋市出身。 講談師・人間国宝。日本講談協会、落語芸術協会所属。日本講談協会では名誉会長を、落語芸術協会では参与を務める。1970年、二代目神田山陽に入門。1973年、二つ目に昇任して「神田小山陽」と改名。1977年、真打ちに昇任。1992年に 三代目 神田松鯉を襲名。1988年、文化庁芸術祭賞を受賞。長編連続物の復活と継承に積極的に取り組み、講談の保存・継承だけでなく、後進の育成にも努める。長年の講談界全体への貢献と功績が認められ、2019年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。
講談とは、演者が高座におかれた釈台と呼ばれる小さな机の前に座り、張り扇でそれを叩いて調子を取りつつ、軍記物や政談など主に歴史にちなんだ読み物を観衆に対して読み上げる日本の伝統芸能のひとつ。
落語は基本的に世話物ですから、色っぽい着物も合いますが、講談は軍談や歴史上の事件を話すこともありますから、落語家のように派手な着物は本来合わないはずで す。
本来、釈台に本を置いて軍談を読んでいた講談は、「読む」ということを芸にまで極めたものです。同じ話芸でも、落語が会話によって成り立つ芸であるのに対し、講談は「読む芸」という点でも、大きく異なります。 落語は「話す芸」です。落語は、庶民の中から起こった笑いと人情をはなす芸、それで噺家と言います。 チのある笑い話ですから、登場する人物の個性を表現したり笑いを描いたりするには、会話の形式で、身振り手振りを取り入れるのが効果的です。ですから、扇子を大 盃に見立てて酒を飲む、キセルに見立ててプカリと吸う、扇子を箸に見立ててそばや うどんをたぐるしぐさなど、さまざまな小道具にして盛り上げます。 講談師も扇子は使いますが、あまり視覚的なしぐさは取り入れないように思いま す。手紙を読むときや剣に見立てるくらいでしょうか。 なぜなら、講談は「読む芸」ですから。
講談は、ぜひ寄席に足を運んで聞いていただきたいと思います。 寄席とは、講談のほかに落語・浪曲・漫才などのほか、曲芸・マジック等々の芸能 が見られる演芸場のことで、全国にありますが、都内の「四大寄席」と呼ばれる次の 寄席が特に有名です。 新宿末廣亭
浅草演芸ホール
池袋演芸場
鈴本演芸場
どの寄席に行くのにもドレスコードはありませんから、仕事帰りにでも気軽に寄ってもらえば良いと思います。ただ池袋演芸場では浴衣や着物を着ていくとちょっと割引してくれますから、たまにはおめかしして出掛けるのも良いかもしれません。
「男の美学」がはっきり出ている話が好きです。弱いもの恵まれないもの可哀そうな ものを憐れむ「惻隠の情」は講談の美学でもあります。 講談というのは「人として美しく生きる」姿勢が描かれたネタがとても多い。それ に感化された私も、講談に出てくる人間のように男として美しく生きていきたいと、 おのずとそういうネタを好むようになりました。
「二ツ目」を約十年務めると、晴れて「真打」への昇進となりますが、このニツ目の 間に持ちネタを増やし、教養を高めておく必要があります。たとえば、たくさんの本 を読んだり、一流の芝居や絵画を見たりして、目を養い、耳を養い、心を養う。