博覧強記の著述家にして、空前絶後の読書ナビゲーションサイト「千夜千冊」を運営する松岡正剛さん。本書は松岡さんが提唱する編集工学のノウハウを紹介するものである。著者は松岡さんの弟子であり、編集工学研究所の専務取締役の安藤昭子さん。
「編集」というと書籍や映像制作が思い浮かぶが、編集工学ではそれを「情
...続きを読む報に関わるあらゆる営み」と定義する。そう考えると世の中は複雑な情報の総体であり、編集力は、仕事はもちろん、日々の暮らしのあらゆる側面で求められる能力である。それら相互作用する複雑さを扱う技術として「工学」を編集と掛け合わせた造語が「編集工学」である。
まず、印象的なフレーズとして、松岡さんの「情報の海に句読点を打つ」という言葉が紹介される。それは後に紹介されるアナロジーにもつながる例えである。本書で語られるのは、本来は多面的な情報を、世に蔓延するステレオタイプに捉われず、いかに区切るか、どう編集し直すか、である。
そして、そのための武器として、アナロジー、アブダクション、アフォーダンスの視点が紹介され、物事のアーキタイプにまで潜り込むことの大切さが説かれる。実践的なワークもある。
ビジネスよりの書き方がされているが、非常にわかりやすく、デザインも秀逸である。編集工学の一旦を見た気がした。より深く知るにはイシス編集学校に入学するしかないのだろう。
かつて松岡さんが企画した丸の内のブックストア、松丸本舗で受けた衝撃を思い出した。今なお更新され続ける「松岡正剛の千夜千冊」は巨大な知の存在に圧倒される。はるかに高い頂きである。