ユーザーレビュー 国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦 藤重太 私はこの数カ月の間、皆さんが心を一つにして、お互いを思いやり困難に打ち勝ってきた感動を忘れないよう心から願っています。中華民国は団結力があり、台湾はとても安全であり、台湾人であることに誇りを持って、胸を張って頭を高く掲げて歩んでいきましょう。 蔡英文 2020年5月20日 第15代台湾総統就任式...続きを読むにて (引用)国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦、著者及び引用文翻訳:藤重太、発行者:皆川豪志、発行所:株式会社産経新聞出版、2020年、247 2020年3月ごろから、我が国では、薬局やドラッグストアの開店にあわせて、人々が長蛇の列をつくり、品薄となったマスクを買い求めていた。一方、台湾の人たちは、インターネットで、自宅に居ながら各薬局のマスク在庫を知ることができたという。その後、私は「全民健康保険カード」によるマスクの「実名制」販売制度と「マスクマップ」の存在を知ったとき、正直、台湾の取り組みが羨ましく思えた。そして、「マスクマップ」のシステム構築では、台湾の唐鳳(オードリー・タン)という政務委員(デジタル担当大臣)が我が国でも注目された。唐鳳氏は、15歳で起業し、33歳でビジネスからの引退を宣言。35歳には、台湾で最年少かつトランスジェンダーでデジタル担当大臣に就任した。IQ180以上とも言われる彼女が政務委員として担う課題は、「社会革新、青年の政治参加、オープン政治」(同書、92)である。この唐鳳政務委員は、多くのIT企業が「マスクマップ」を開発できる環境を整えた。しかし、新型コロナに対する台湾の施策は、これだけではない。世界的に見ても速い段階で新型コロナを封じ込めた台湾は、なぜスゴイのか。その解を求めるべく、藤重太氏の本を読み進めることとした。 歴史的背景から、世界保健機関(WHO)に加盟できない台湾は2003年に襲ったSARS(重症急性呼吸器症候群)で苦い経験をしている。このときの悲劇とも言うべき経験から、台湾は、2011年に「インフルエンザパンデミック対応の行政部のための戦略計画」を纏めている。詳しくは本書に譲るが、この戦略計画は、このたびの新型コロナの初動期から大いに生かされた。特に、海外からの流入について、台湾は、非常に敏感になっていたことがわかる。「初動をいかに抑えるべきか」ということと「感染経路不明をいかに少なくするかということ」は、感染症対策の基本であろう。また、本書には、2月25日から台湾の小・中・高が一斉に開校した際の取り組みについても書かれている。例年、通常のインフルエンザ対策でも分かるように、学校における集団感染は、最も憂慮すべき課題であろう。事実、我が国においても、大学の学生寮などで感染が広がった。さらに台湾は、国民に負担を強いる代わりに経済的な補償もしっかりと行ってきた。理にかなった経済政策とセットとした台湾の新型コロナ対策は、各国の参考になるものだと感じた。 また、台湾政府は、インフォデミックにも細心の注意を払っていることが理解できた。インフォでミックとは、ネットで噂やデマを含めて大量の情報が氾濫し、現実社会に影響を及ぼす現象のことである。1) 我が国でも、2020年3月ごろは、ネットでデマが広がり、トイレットペーパーが小売店の棚から消えた。災害等の情報伝達手段として、個々が発信するSNSが注目されているが、インフォデミック対策も同時に行うことが急務だ。そのため、私は、政府や自治体が国民などに対し、どの情報を信頼すべきなのかということを正確かつ迅速に伝えなければならないと感じた。 本書には、台湾が新型コロナを封じ込めた要因を様々な観点から紹介しているが、私は、蔡英文総統のリーダーシップもかなり優れていたと感じた。冒頭にも総統就任式の演説を紹介したが、至るところに「国民への感謝」という言葉が盛り込まれている。演説には、「台湾の物語はちょうど新たな1ページが始まったばかりです。(同書、247)」という蔡英文総統の言葉も聞かれた。そこには、歴史的な背景にも負けず、国民と一体になって、新型コロナを制圧するに留まらず、台湾の宿命にも立ち向かうリーダーの姿がある。 これからの秋冬に向けて、我が国は、第二波、第三波と言われる新型コロナと戦い続けなければならない。台湾では、感染症との戦いを「防疫戦争」とみなし、施策を「作戦」と位置づけた。本書は、高校卒業後に単身で海外台湾に渡り、それ以降、日台交流のサポートを行っている藤重太氏だからこそ描けた台湾の真の姿がある。本書では、台湾の歴史的背景から政治的な仕組み、そして蔡英文総統を始めとする政治体制や新型コロナ対策を学ぶことができる。それらを理解することによって、私は「なぜ台湾が新型コロナを封じ込めることができたのか」という解を得ることができた。 先ほど、台湾は、SARSのときの苦い経験を新型コロナウイルス対策に生かしていると記載した。しかし、我が国においても、100年ほど前、”スペイン風邪”とも呼ばれた新型インフルエンザによる感染症パンデミックを経験している。その際、”スペイン風邪”を主題にした国内唯一の書籍によれば、東京では「各病院は満杯となり、新たな『入院は皆お断り』の始末であった」と書かれている。この”スペイン風邪”では、「後流行」も襲い、村が全滅したところもあったという。2) パンデミックとは違うが、東日本大震災のときにも、以前の津波のことは忘れ去られていた。寺田寅彦の警句とされる「天災は忘れたころにやってくる」。それは、新型の感染症に対しても言えることだろう。 まだ収束が見えない”小さな難敵”に対して、過去の反省や台湾の事例も参考にしながら、私達は戦い続けなければならないと強く感じた。 1)2020年4月6日 7:00配信 日本経済新聞 「コロナで注意 『インフォデミック』とは」 2)2020年4月16日付 日本経済新聞 「忘れられたパンデミック ”スペイン”インフルエンザ 中」 Posted by ブクログ 国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦 藤重太 →感動し、うらやましく、泣けてきた 日本にはこういう政治家は居ない 2020/09/07「台湾に学ぶべし!」謙虚さが大事 蔡英文総統 第二期就任式の言葉2020/05/20 コロナウィルスの封じ込めの成功 「国家の光栄感とは、生死を共にした共同体であること」 無名のヒーローたちが国家を作る 一人...続きを読むの英雄ではない 政府の役割は、国家の非常時・危機に対応すること ①危機のリーダーシップ 大局観・国家危機意識 ②危機シナリオ 担当大臣はプロ 組織体制 ③国民・メディア・政府の間の信頼関係 ⇒危機管理として日本は真逆、落第! 国家の非常時・危機に一体となる 国の役割・責任・貢献 ①リーダーシップ ②ビジョン・戦略 ③組織・人事 ルーティンではなく、国家への貢献 Posted by ブクログ 国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦 藤重太 なるほどですねぇ… 台湾の政治、おそるべし。 もちろん、すべからく物事には光と陰の面があるものですし、また人口規模も異なる日本と単純比較は出来ないと思いますので、手放しで何もかも台湾がすばらしいと持ち上げるつもりはありませんが、新型コロナをかなり完璧に封じ込めると同時に政府への支持率も上げているのは...続きを読むすごいと思いますね。 1つ…恥ずかしながら今頃…認識を新たにしたのは、台湾の大臣たちは国会議員(立法院の議員)ではないのですね、日本と違い。 Posted by ブクログ 藤重太のレビューをもっと見る