散文詩形式で書かれた小説は初めて読みました。
主人公の心情が、まっすぐに心に刺さります。
暴力をふるう父親から逃げ、行き場を失った少女と、独りで暮らす認知症の老女。
こうした設定でありがちな心温まる交流ではなく、感動の結末が待っているわけではない。
もっとリアルに、混乱しながらも力強く人生は続いて
...続きを読むいく。
相手を利用することばかり考える若者と、厄介事を避けたがる大人たち。そんな世界で居場所を見つけるのは大変です。
嘘を重ねるうちに自分の存在感が薄れてしまうアリソン。相手に求められる姿を演じ続ける自分を透明人間と呼ぶ。
読者にも、事実と主観の境界があやふやになってきます。
マーラの記憶は安定しないけれど、確かに過ごしてきた人生があり、アリソンと過ごした時間は消えるわけではない。言葉にできるものが全てではないと感じられました。
「人はあなたが言ったことは忘れる。
でも、あなたに対して抱いた気持ちは決して忘れない
――カール・W・ビューナー」