晩年のサルトルと秘書のベニィ・レビィとの対談記録である。対談編ということで、読みやすくはなっている一方で、哲学的な基本概念を理解していないとなかなか追いつけないだろう。特に「8.政治よりももっと根本的な」以降は、「友愛」と倫理や暴力の関係性の話がメインとなっており、「友愛」の概念をある程度知識がない
...続きを読むと理解が難しいだろう。やはり「希望」を語るには、過去の革命や、当時起きていた植民地解放運動の話を抜きには進めることはできない。現代は場所が変わっただけで、世界情勢はサルトルがいた時代と近くなってきているような気がする。仮にサルトルが今も生きていたら、技術や経済だけが発展したような、今日の世界に対してどのような見解を示すのだろうか、ということを考えざるを得ない。短い対談だが、これだけでもサルトルが20世紀の知識人を代表する存在だということを改めて感じとることができる。果たして現代においても「希望の中で生きている」と言えるのか。
訳者による解説が充実しているので、サルトルがどんな人かあまり知らない方は、まず本編ではなく解説から読んだ方がよい気がする。文学・思想に興味がある人やサルトルという人間に興味がある人にももちろんおすすめだ。