愛好家の頭の中を覗くのは意外と楽しい。混じり気のない好奇心と探究心で物事を突き詰めているから嘘偽りがない。
コケの生態を講談みたく熱い語りで展開していく著者にクスッとくる。「入門書」と評されていたけどコケ目線だけでなく、想像以上に初心者の目線で書かれていたのが第一の衝撃。(こんなにも例えがわかりや
...続きを読むすい人を久々に見た気がする笑)品種の紹介も生息地や形がメインで専門用語は出てこない。一眼で撮ったのか画質もピカイチで、ひょっとしたら目で楽しむことからという意味で入門書なのかな。映えとか関係なしにみずみずしい緑が眼前に広がる。
第二の衝撃は場所によって生態が全く異なってくるということ。都会や里山、深山など7つのフィールドに分けて紹介されるが同じ山なのにそんなに顕著な違いがあるのか、理解し切れるのかと不安すら覚える。しかし光・水環境で形態すら変化することをものの数ページで聞くや否や、確かめたい衝動にたやすく駆られてしまった笑
のんびりしていそうで案外したたか…
他種のコケや雑草との生存競争のために生え方まで計算され尽くしている…!そして「庭園を造るにしても別にコケ一種類にこだわらなくても良いのでは?」と言うのがまた著者らしい…
つい数年前までコケは脅威だった。地面や木、コンクリートの隙間をびっしりと覆うさまは「美しい」ではなく「気持ち悪い」と認知。あのジュワッとした感触もなかなか好きになれず…視界に入ると目を逸らすように努めるかしたもので、愛好家の耳にでも入った日にはきっと炎上案件になっていただろう汗
最近のコケブームで「そんなに悪くないものなのかな?」と気になり出して、なおかつ好き嫌いも緩和されつつあった矢先に出会った。
最後、第三の衝撃は高山のコケがめんこいこと笑
苦手だった自分が好みのコケを見つけるなんぞ今でも信じられていない笑 小ぶりで流れるような生え方が何か良いタカネスギゴケ、触りたくなるようなフワフワ(透明尖)のシモフリゴケに「コケの女王」と称されるマルダイゴケ。厳しい環境下でも可愛い容姿をKEEPし、頑張って仲間を増やそうとするところがいじらしく見えた。(この辺で筆者に感化されている事を自覚する)
引っこ抜いたら再生までに何十年も要したりとデリケートな面もあれば、環境破壊の前触れも察知できるという地味に凄い彼ら。学生時代から(文字通り)寄り添ってきた筆者が彼らを慕い憂う気持ちはまさに純度100%のものだろう。その熱意に感化されて、いつの間にか本書が入門書じゃなくて克服の書にすり替わっていた。