僕は銭湯という世界をまったく知らなかったのですけども、こんなに豊潤で色濃く、ポジティブな世界があるんだなあ、と抽象的な部分ではそう感じました。また、電気風呂だとかジャグジーだとかの風呂の種類もそうですが、浴室の装飾や配色にしたって、作り手も楽しめるし受け手も喜べるし、っていうWin-Winな業界なの
...続きを読むだなあということも知ることができて、今までずっとこの世界を知っていた方々が羨ましくもなりました。著者の塩谷さんはもともと建築設計事務所で働いていた女性です。『銭湯図解』も建築図法である「アイソメトリック」という技法でもって描かれている。内部構造を、角度をつけて俯瞰的かつ微細に描いてあります。まるで箱庭を眺めているような心はずむ楽しさを感じながら眺めてしまいました。画風も水彩絵の具による彩色も、やわらかであたたかい。ひとつの銭湯につき、見開き二ページで図解をし、解説にそのあとの二ページ、合計四ページを費やしています。解説文では、著者が設計に携わっていたことをほうふつとさせる、造形に対する事細かな描写とゆたかな語彙が、穏やかめの泡風呂のような心地よい刺激を読者の脳にもたらすでしょう。