美術と言っても文化が違えばいろいろな形がある。著者は西欧や中国の美術について、権力者による威圧的な造形が中心であるのに対して、日本は遊び心にあふれ見るものを楽しませる造形と見ている。
「庶民ファーストなアート」として日本美術を捉える著者は、例として江戸時代の宗教美術を挙げている。
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絵馬は、絵画の庶民化においてとくに重要と見ている。江戸時代の中期以降になると大絵馬の奉納は全国で盛んになった。小さな寺社の絵馬は、浮世絵師として成功しなかった者や、素人絵師が描いた大絵馬が多い。
見るものに爪あとを残す地獄絵もそうだ。近世後期になると派手な色彩を使ったドラスチックなものが主流になった。著者は江戸時代後期に描かれた長徳寺の六道絵を例に上げている。
日本美術を一味違った視点で見るとまた興味深い。