作品一覧

  • メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生
    5.0
    1巻3,520円 (税込)
    『タコの心身問題』の著者が、心の進化の海にますます深く潜行する待望の一書。「メタゾア」は多細胞の動物を指すためにE・ヘッケルが導入した言葉だ。メタゾアの生物の進化は、たんに複雑さをもたらしただけではなく、それぞれに独特なあり方、新しい「自己」を生み出しつづけた。タコの経験、ヤドカリの経験、魚の経験……こうしたすべての動物を経験する存在にしているのは何だろう? 現生の生物たちを手がかりに、さまざまな感性のパラダイム、そしてその進化的起源を探っていく。著者にとってその探究は、海の生物たちとの、美しく体感的な出会いと結びついている。タコの集住地「オクトポリス」を訪れ、タコの「自己」は頭部に1つあるのか、「1つ+8本」に分散しているのか、あるいはそれらの状態を切り替えているのか?という興味深い問いに迫る第6章、水の中を飛び回る魚たちの感知能力や賢さに接して、神経系が作りだす電場について思索を深める第7章など、海洋生物の生活の細部を間近で観察することが、そのまま科学と哲学の「謎が謎を呼ぶ作業」でもある。著者は幅広い動物が〈感じられた経験〉(広い意味での意識)をもっていると認め、意識があるか・ないかという二分法を超えて、心の発生についての「包括的な説明」を試みている。驚きの生物進化読本。
  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
    4.0
    1巻3,300円 (税込)
    ■心は何から、いかにして生じるのだろう。進化は「まったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」。一つはヒトや鳥類を含む脊索動物、もう一つがタコやイカを含む頭足類だ。哲学者であり練達のダイバーでもある著者によれば、「頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう」。人間とはまったく異なる心/内面/知性と呼ぶべきものを、彼らはもっている。本書は頭足類の心と私たちの心の本性を合わせ鏡で覗き込む本である。■海で生まれた単細胞生物から、現生の頭足類への進化を一歩ずつたどれば、そこには神経系の発達や、感覚と行動のループの起源、「主観的経験」の起源があり、それは主体的に感じる能力や意識の出現につながっている。「タコになったらどんな気分か」という問題の中には、心とは何か、それは物理的な身体とどう関係するのかを解き明かす手がかりが詰まっている。■知能の高さゆえの茶目っ気たっぷりの行動や、急速な老化と死の謎など、知れば知るほど頭足類の生態はファンタスティック。おまけに著者が観察している「オクトポリス」(タコが集住する場所)では、タコたちが社会性の片鱗を示しはじめているという。味わい深く、驚きに満ちた一冊。
  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

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    この本を読む前と後でタコの印象が大きく変わり、なんだか愛着を感じるようになった。すぐにでも生きてるタコを見に行きたくなる。
    心身問題について論じる本はたくさんあるけど、下手に哲学的なものよりも、この本を読むほうが有意義かもしれない。単に知識が増えるだけではなく、これから先の生き物との関わり方が変わるかもしれない。少なくともタコが痛みをどのように感じているか、考えずにはいられなくなる。

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    2024年03月21日
  • メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「タコの心身問題」に続いて、哲学を生物学(または生物が活動する様子)からボトムアップした本。翻訳者が異なるからか、ことば遣いの端々に幾ばく難解なきらいがある(読点と読点の間が長い)ように思える。が、おもに頭足類を扱った前著より、時代もいきものもさまざまな分野から取り扱われていて、なんというか、「とっちらかりながらおもしろい」。本著のテーマの主格はおそらく『経験』で、これは、あっさり「どれにあってどれにない」とは片付けられない。表現しづらいが(たぶん読まれたほうが早いでしょう!)、「感覚器官で得るもの」と「得たそのものの集積」、「自他の区別(自分が他者とは別にあるという感じ)」などがいきもの、あ

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    2024年02月29日
  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

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    タコやイカは知性が高いと言われている。進化樹の中でははるか昔に枝分かれした人類とタコであるが、異なる進化の中で神経系をそれぞれで発達させているのが興味深い。人間は脳で集中制御しているのをタコでは腕部にも脳のような機能があるなど、違いはあるもののタコにはタコの心があるようだ。また、もし異星人が存在するのであれば、独自進化した異星人の心を知るためにもタコの心を研究するのは有意義だ。まずはタコになった気分を考えるというのは面白い思考実験になりそう。こんなことを考えられるのも人間の特権のようなのだけど。何冊か類書を読んだうえで、この本にたどり着いたが、読みやすくて分かりやすい。

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    2024年02月02日
  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

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    著者は熟練ダイバーでもあるそうだが、「オクトポリス」でのタコに手を引いてもらった(と感じた)体験、ジャイアントカトルフィッシュという種のイカとの交感の描写が、実らない愛を感じさせ切ない。
    頭足類が地球上の動物の中で極めて特殊な位置づけの生き物であることに改めて感心。ボリュームあり読むのはちょっと大変だが良書。

    P10 頭足類を見ていると「心がある」と感じられる。それは何も私たちが歴史を共有しているからではない。進化的には互いに全く遠い存在である私たちがそうなれるのは、進化が、全く違う経路で心を少なくとも二度、作ったからだ。頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会う

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    2023年01月15日
  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

    Posted by ブクログ

    スキューバをしながらオクトポリスというホタテの貝殻に敷き詰められたタコ達の住処や生態を眺め、哲学や生物学の授業を受けているようだ。タコを擬人化してその知性を探りながら、読書中、私自身の意識は海底にある。ダンゴムシに心があると言われれば、それはこじ付けだと感想を述べながら、タコに知性があると言われれば、それなら分かる気がすると興奮しながら一気読み。また面白い本に出会えた。

    カンブリア爆発と呼ぶ生物多様性を生む時期より前、エディアカラ紀にも多様な動物がいた事がわかってきた。6億年前だ。カンブリア爆発は、生物同士の関係性、被食者と捕食者の競争により激化したと考えられる。攻撃や防御の手段、海中を泳ぐ

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    2022年12月25日

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