われわれ日本人はアフリカのことをなにも知らない、というのが率直な評価ではないだろうか。もちろんアフリカという大陸を知らない人はいないし、アフリカの国家をひとつも挙げられない人もいないだろう。智識としては確実にわれわれのなかに共有されている。しかしより現実的な関心となるとどうか。いまはコロナウイルス禍
...続きを読むの真只中にあり海外旅行どころではないが、昨年までの人気旅行先はやはり東アジアやヨーロッパが中心で、アフリカの場合は旅行ガイドの売場すら狭くなっている。テレビで取り上げる国際ニュースもアメリカや中国が中心で、アフリカについてはあまり観ることがない。しかし、人類の歴史を紐解いてみれば、その伝播の仕方については諸説あるが、われわれホモ・サピエンスが誕生したのは、紛れもなくアフリカなのである。そういう意味では、もっとアフリカについて関心を持つべきだと思う。本書はアフリカの歴史をその人類誕生のころから現代に至るまで概観しており、非常に勉強になることが多い。かつてはよく「闇黒大陸」と呼ばれ、現在でも発展途上国の代表的な存在として扱われてしまいがちであるが、そのような見方は偏見に過ぎないことがわかる。アフリカにも古くから独自のコミュニティがあり、優れた文明があったのだ。アメリカを中心に現在ちょうど「Black lives matter」運動が世界中を席捲しているが、本書を読むこともまた黒人差別を理解することに繫がるのではないだろうか。