作品一覧
-
4.1
ユーザーレビュー
-
Posted by ブクログ
本作の読みどころは、日常では「悪」と見做される行為が、日常が崩壊したそばから仕切りを失って主人公の行為に雪崩れ込んでくるところにあると私は感じた。淡々としているところが、逆に凄まじい。だから、主人公と一緒に、自分の倫理観も麻痺していく。報復、暴行、火付、殺人。つくづく、「善行」なんてものは、極めて条件付きの世界でしか航行できないやわな船なんだと思わされる。
ファンタジーノベル大賞は、私の中ではまだ信頼できる賞モノのひとつ。酒見賢一氏しかり、森見登美彦氏しかり。今回もいい感じ。読み手に媚びてない作品は、よい。含みの多さも大いに歓迎できる。地名の消滅、自治体の消滅、死の遠さ、余命宣告を受けた後の生