吸血鬼や人狼が人類と共存する19世紀イギリス、とある舞踏会の夜アレクシアは吸血鬼に襲われ偶然刺殺してしまう。アレクシアは魂なき者として異界の者の能力を消し去り人間に戻す力があったのだった。
スチームパンクの世界観に吸血鬼や人狼という異界族、イタリア人の血を引く強気なオールドミスの主人公。イキナリ始ま
...続きを読むるストーリーに翻弄されていると、設定がさり気なく説明されながら個性豊かな登場人物たちが暴れ回り、どんどん物語に引き込まれます。
どこにも属さないはぐれ吸血鬼の出現や人狼の失踪事件を、異界管理局の人狼捜査官マコン卿が調べることで話が進むのですが、そのミステリ的展開よりも、アレクシアとマコン卿の丁々発止のやり取りやロマンスに物語の核は移っていきます。異界族ハーレクインの様相を帯びてきたかと思いきや、ラストに至って大活劇が繰り広げられるという何とも贅沢な娯楽小説です。
主人公アレクシアはその容姿や出自などから自分を卑下する癖がありますが、自分で考え自分で行動するこの時代には(架空の19世紀ではありますが)珍しいタイプの女性で、そのことが物語の痛快さを高めています。それは恋愛観にも現れており、黙っておとなしく王子様を待ったりはしないのですね。それが故の結びの盛り上がりと爽快感。これは続きが楽しみです。