テロと中産階級(といいつつ、日本的な基準で見ると富裕層)の反乱というモチーフを2003年に書いているというのが、予言的。
中産階級に対して狂騒的に反抗をあおるアジテーターの女性、ケイの言動はジョセフ・ヒース「反逆の神話」に描かれる文化左翼に近いんだが、リベラルな世界観のバックラッシュという意味で、
...続きを読むトランプ現象も連想させられる。
ただ、このお話の本質は中産階級の反乱ではなく、暴力に人々が感染し、世界の無意味性がむき出しになっていくという事なんだろうなあ。特に、世界が無意味であることへの気づきが、ある種の人には救いになるという逆説がおもしろい。
不勉強でよくわからないのだが、小児科医グルードの話はアナーキズムと関係あるのではないだろうか。あと、アドラー心理学を知っていたら、より深く読めた気がする。
J・G・バラードの本ははじめてだったが、白昼夢のような筆致にひきこまれ、ぐいぐいと読み進めてしまった。