第56回メフィスト賞受賞作であるデビュー作への個人的評価は、微妙だった。昨年8月に約3年ぶりの新刊が出ていたのに気づき、手に取ってみたわけである。今回も舞台はコンビニだ。殺人鬼がどうこうとか…おいおい、物騒だな?
今回の主人公は、コンビニ専門の名探偵(?)として活動する高校生・春紅。依頼を受け
...続きを読む、彼は、あるチェーンの店舗で発生した不審死について調査するため、アルバイトとして潜入していた。設定自体すでに無理があり、前作が頭をよぎる。
推理力はあるのかもしれないが、いきなり店内を勝手に調べ始めて咎められる。結局、彼の目的は他の店員たちに知られるわけだが、口が重いのは当然ではないか? こんな店員、普通なら即刻クビになると思うが。序盤から悩ましい。
前作もそうだが、何なのさこのコンビニ…。揃いも揃って訳ありな人間ばかり。春紅がよっぽど聞き上手なのか、いつの間にやらベラベラと口を割っているし。背景にあるのは、コンビニという職場の過酷な環境ではあるのだが。
全編を通じた謎に、訴求力があるかどうかは微妙なところである──と、前作の感想に書いたけども、前作より構成は練られているし、訴求力はあるだろう。感心した部分がないことはないし、全体構図は予想とは大きく違っていた。
そりゃそうだろう、いくら何でもこんなに短絡的だなんて思わない。ネタばれになるので書きにくいが、実際に耳にする事例ではありますよ。作中の描写とはいえ読んでいてしんどい。積もりに積もって、ということなのだろうけど…。
高校1年生からコンビニ勤務という秋保水菓さん。現在も勤務中なのかわからないが、コンビニ勤務経験が随所に活かされている点には触れておこう。今後ともコンビニに拘るのか? 力量はあるのだから、もったいない気がする。
前作も本作も、良くも悪くも秋保さんの深いコンビニ愛を感じるのは確かだ。今や重要なインフラの一つとも言えるコンビニ。なくなったら困るけど、謎を買おうとは思わないかな。そしてまた、青春物っぽく終わったねえ。